財政政策の「出口戦略」が世界の経済成長を抑制--大場智満・国際金融情報センター理事長(元財務官)
一方のドイツでは、国民の大半がギリシャを批判的に見ている。人口の4分の1が役人で、統計もまともに作れないような国を助けるのはばかげていると、ギリシャ支援に反対意見が多い。だから、ドイツとしてはIMFを加えたほうが、国民に説明しやすかった。そういう背景から、今回の支援策のような折衷案となった。
IMFは貸し付け条件(コンディショナリティ)が厳しく、ギリシャに対する強制力ともなる。
ただ、このスキームを動かすには、16カ国の全会一致という要件がある。そのため、必ずしも支援が実行されるとは限らない。あくまでギリシャが自助努力で530億ユーロの国債を売って、立ち直らなければならない。
現在、ユーロ建てのドイツ国債10年物の利回りは3.25%。ギリシャ国債は6.25%程度で3%の上乗せ金利がついている。ギリシャにとっては厳しい条件が続いている。
パパンドレウ政権は、2010年予算案に酒・たばこ税の増税や歳出削減、年金支給開始の先送り、徴税強化など総額80億ユーロ規模の赤字削減策を織り込んだが、国民がそれについていくかどうか。労働者の大規模デモやストライキも続いており、先行きリスクが残っているのは確かだ。
EUの高官には「なぜギリシャをユーロ圏に入れてしまったのか」と嘆いている者もいるが、今さらギリシャがユーロ圏を離れることもできない。ギリシャが崩れれば、小康を得ているユーロ相場も再び波乱は避けられない。
--ギリシャに支援策発動となれば、影響は大きいと。
次はポルトガルやスペインか、などと影響が波及しかねない。ギリシャは人口がわずか1100万人。その国がユーロを揺さぶっているのだから、もしポルトガルやスペインに本格的に波及すれば、ユーロ自体が本当に弱い通貨になってしまうだろう。