財政政策の「出口戦略」が世界の経済成長を抑制--大場智満・国際金融情報センター理事長(元財務官)
米国はといえば、財政赤字は今年、対GDP比で10%を超えるが、欧州より1年遅れて14年に向けて4%以下に抑えるという目標を作って、予算教書の付属文書に載せている。
では、日本はどうするか。ジョークのような話だが、欧州が13年に3%以下、米国が14年に4%以下だから、日本は2015年に5%以下にしたらいいのではないか。
いずれにしろ、財政健全化を優先することで、ユーロ圏は緩慢な景気回復を余儀なくされる。IMFの予測でも、今年が実質1.0%、来年が1.6%と低成長にとどまる。
■ギリシャ危機への資金支援策発動の確率は2~3割
--ギリシャ危機は支援策決定でこのまま収束に向かうのでしょうか。それとも、危機は今後も続き、ポルトガル、スペインなど周辺国にも波及していくのでしょうか。
ギリシャは今年、借換債だけで200億ユーロ、全体で530億ユーロの国債を発行しなければならない。これはギリシャにとっては相当な規模だ。
3月25日にユーロ圏の首脳会合では、IMFを使うことに決まった。同時にバイラテラル(2国間)の資金支援もしようということになった。ただ、このバイラテラルな支援は、安い金利で支援するのではなく、普通の借款となる。これをIMFのカネと組み合わせることにした。よくそこまでまとまったと思う。
当初、フランスはECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁を出している国で、IMFの関与を阻止し、ユーロ圏だけの処理にしたかった。これまでのIMFの専務理事は、みな僕の友人だが、ドラロジエール氏やカムドシュ氏にしろ、政治的野心がなかった。
が、今の専務理事のストロスカーン氏は元フランス財務相で、政治的野心があるらしい。そうなると、サルコジ仏大統領とすれば、IMFにあまり名を上げさせたくはない。トリシェ総裁にしても、自らが中央銀行としてやるべきことを、IMFにやらせるということで、あまりご機嫌はよくない。