グーグルも重視する職場の「心理的安全性」とは 「解決策は」と聞く上司に決定的に欠けた視点

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オールステート保険でイノベーション戦略および製品管理部門の責任者を務めるジェイソン・パークは、適切な環境を整えなければ、人は大ざっぱな試作品を周囲に見せるのをためらうという。

ほとんどの社員が不安に思っているのは顧客の拒絶反応ではない、と彼は感じている。組織には、直属の上司や役員から厳しい批判を受けることを恐れるあまり、自らのアイデアを見せようとしない人がいる。

だからパークは、社員がリスクをとる後押しをしている。完璧からほど遠い状態でもかまわないから、上司にアイデアを提案してほしいと呼びかけている。そういう荒削りなアイデアや漠然とした提案を促したいときは、「準備段階」や「発見の段階」などといった、社内で共通の呼び名をつけるのもひとつの手だ。

社員が心理的な安全性を強く実感できる環境を整えるにはどうすればいいか? それには、リーダーが新しいアイデアや厳しい現実を歓迎する姿勢を示す必要がある。例えば次のようなことだ。

① 反対意見を歓迎すること
② 上司が自分自身の失敗について話すこと
③ 悪い知らせや正直な意見を伝えてくれた誠実さに感謝すること

形になっていなくてもいいから提案や意見をあげてほしいと伝えるとともに、否定的なことを口にしても出世や進退に影響しないと明言するのだ。

見苦しい事実も決断の材料だ

経営者やリーダーのなかには「答えがすべてそろっていないなら問題を持ってくるな」という態度の人も少なくない。「解決策も示せ」というわけだ。

ところが、優秀なリーダーは、たとえ答えがわかっていなくても問題を口にしていいという安心感を与えてくれる。

レストラン予約サイト・オープンテーブル社のクリスタ・クォールズCEOは、「早く、頻繁に、見苦しく」というモットーを繰り返し部下に伝えている。

「早く、頻繁に、見苦しく。それでいいのです。完璧である必要はありません。そのほうが、格段に早く修正に取りかかれます。どれだけ事実が見苦しくても、私は怖くない。しょせんは、決断を下すための情報にすぎませんから」

部下を持つ人は、自分が心理的安全性を脅かす存在であると自覚する必要がある。上の立場の人間は、多少の弱さを見せたほうがいい。そうすれば、部下は大胆に思えるアイデアやイノベーションにつながる過ちを口にしやすくなる。やってみて学ぶという姿勢は、話しやすい雰囲気のなかで育つ。

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