グーグルも重視する職場の「心理的安全性」とは 「解決策は」と聞く上司に決定的に欠けた視点
調査の結果にグーグルはショックを受けたかもしれないが、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソンには何の驚きもなかった。
実は彼女はその調査の20年以上も前に、「チームにおける心理的安全性」という概念を提唱しているのだ。
彼女の定義によると、チームにおける心理的安全性とは「チームのメンバー間による、このチームでは対人リスクをとっても安全であるという確信の共有」を指す。
ミス多発チームの看護師長はどんな人?
エドモンドソンは研究者になるとすぐ、2つの病院を対象にして薬に関連するミスについての調査を行った。すると、指導力の高い看護師長や良好な関係性をチームにもたらす看護師長のいるチームほど、ミスの報告が多い傾向があることがわかった。
リーダーシップの高いチームのほうがミスが多いとは、どういうことなのか? これは問いかけ方が間違っている。リーダーが有能なチームのメンバーは当然、安心して医療ミスの話題を持ち出すことができた。
優れたチームのほうがミスが多いのではない。ただ単に、ミスについて話し、ミスから学ぼうとする意欲が高いだけなのだ。その結果、ミスを報告する割合も高くなったのである。
エドモンドソンはその後も精密な調査をたくさん実施し、チーム内で意見やアイデアを出す、ミスを認める、疑問を投げかけるといったことを安心してできるとメンバーが感じていると、学習に積極的になり、チームとしてのパフォーマンスが向上することが明らかになった。
創造力を働かせるうえで、心理的な安全性が確保されていると、常識にとらわれない策を提示できるようになる。周囲から少々おかしいと思われかねないアイデアであっても、安心して口にできる。バカにされる心配がなければ、人はさまざまな選択肢を提示する。
創造的なことを生み出そうとする過程において、ミスについて率直に話すことは絶対に不可欠だ。端的にいって、心理的な安全性は、実際にやってみて学習する効果を高めてくれる。創造力の探求に、実際にやってみて学ぶことは欠かせない。
試作と実験にはある程度の失敗がつきものだ。しかし、チームで作業する場合、メンバーが失敗を恐れ、満足度の低い結果しか出せずに非難されるのではないかと不安に思うケースも多い。
そうなると、みな無難に乗り切ることだけを考えて、限界に挑もうとしなくなる。
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