身体拘束は違法、患者側が逆転勝訴
「あれだけ人に優しかった息子が縛られて亡くなったのは本当におかしいと、改めて大きな声で言いたいです。精神医療の身体拘束はもう終わりにしてほしい。われわれ父母よりも早く先立たれてしまい、今もとてもつらいですが、この判決で日本の精神医療が変われば、あの子も浮かばれるでしょう」
石川県在住の大畠正晴さん(70歳)は涙ながらにそう訴えた。
同県内の精神科病院で大畠一也さん(享年40)が肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)で亡くなったのは身体拘束が原因だとして、父正晴さんと母澄子さん(68歳)が病院に賠償を求めていた裁判で、名古屋高等裁判所金沢支部は2020年12月、病院に約3500万円の支払いを命じる、両親側の逆転勝訴の判決を言い渡した。
判決によると、一也さんは統合失調症と診断され2016年12月に入院。6日間ベッドに手足などを拘束され、拘束を解かれた直後に、足の静脈にできた血栓が肺の動脈を詰まらせるエコノミークラス症候群で死亡した。
病院側は、拘束前日に一也さんに暴力行為があったため違法ではないなどと主張したが、蓮井俊治裁判長は拘束開始時点では一也さんがすでに落ち着いていたことを重視し、医師による拘束決定の判断は「裁量を逸脱するものであり違法」とした。
「身体拘束の開始が違法だと明確に言った、非常に画期的な判決だ。この判決を機に、拘束の現状を見直してほしい」
「精神科医療の身体拘束を考える会」代表、杏林大学の長谷川利夫教授は評価する。同会には全国の身体拘束された本人や家族から、200件を超える相談が寄せられている。
それでも入院後一度も会えぬまま、息子を亡くした両親の悲しみは深い。
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