死にまで至る「身体拘束」に頼る精神病院の現実

日本の身体拘束率は国際的に見ても異常に高い

「もし、こうした一審判決の結論が認められたら、法律などで一定の歯止めがかかっているように見えても、医師の裁量という名の下、どんなに問題のある身体拘束であっても違法性を問われないことになりかねなかった」(原告側代理人の佐々木信夫弁護士)

「常識外れ」は、異例とも言える拘束期間の長さからも見て取れる。

前出の長谷川教授が2015年に国内11の精神科病院を調査したところ、平均拘束期間は96日に及んだという。こうした長期にわたる身体拘束が、患者の心身に与える影響は大きい。

32日間連続で身体拘束された男性の告白

「32日間連続で身体拘束された結果、脚の筋肉は落ち、右臀部を見ると黒々とした大きな褥瘡(じょくそう)ができていました。6年たった今でも、それは消えていません」

宮城県在住の60代の男性は、県内の精神科病院で自らが受けた身体拘束の実情をそう話す。男性は2014年、躁状態が悪化しこの病院に入院すると、即、ベッド上で身体拘束された。入院して3日ほど経つと、「多動や不穏」といった症状は消えたが、一向に拘束は解除されなかった。

食事や排泄の際には外されるが、終わるとまたベッド上に拘束される。基本的に24時間、両手・両足・胴の「5点拘束」がいつ終わるかわからないまま継続された。

「当初は3日程度で解除されると高をくくっていましたが、10日経っても20日経っても1日中ベッド上に5点拘束される日々が続くと、精神的に参ってきました。初めはこんな人権侵害は許せないとの怒りが湧きましたが、尿瓶(しびん)やちりとりに排泄する屈辱を経て、もう最後は拘束解除の決定権を持つ医師の権力に屈するしかないという、諦めの気持ちに至りました」(男性)

諦めの気持ちに至ったのを見計らったように、永遠に続くとも思われた身体拘束がようやく解除された。

「入院時はいちばん混乱しているしんどい時期なのに、急性期だから有無を言わせず身体拘束するという姿勢が鮮明でした。いちばん手厚い医療が必要なときのはずなのに、縛り上げて放置されたとしか思えませんでした。これではとても精神科病院に信頼感など抱けません」(同)

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