なぜ松山英樹は、米ツアーで優勝できたのか 勝利に必要なのは、志と努力と運

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すっかり蒸し暑くなって、水分補給が大切な時期です。さて、今日は志と努力と運のお話。

今、はまっている韓国歴史ドラマがある。その内容は、主人公の女の子が自分の父親にかけられた疑惑を晴らすために宮中に入り、数々の困難に立ち向かいながら真実を突き止めて疑惑を晴らし、努力と勉強を重ねるうちに自身も出世していくという成功物語である。

それを録りためて見ていたら、ある傾向に気がついた。それは、毎回降りかかる難題に、(1)最初の志を忘れない。前向きに努力する。(2)問題解決に向けて勉強し、知恵を駆使し前向きに立ち向かう。そして、(3)危険な場面では必ず誰かに助けられる運のよさがある。そこで、はたと気がついたことは、これって優勝争いに似ているなと。

どういうことかというと、(1)は優勝する、という志。(2)は3日間なり4日間なりの競技日数の中で、持てる技術と戦略を組み立ててプレーする。足りないところは技術習得する。体力も鍛える。(3)は、ミスショットしたボールが木に当たったのにフェアウエーに戻ってきたとか、狙っていないのにチップインしたとかの運のよさがある。

そんなことを考えていたら、突然ビッグニュースが入ってきた。22歳の松山英樹選手の米国ツアー優勝だ。それも準メジャー級といわれる大きな大会だ。世界のプロが勝ちたいと思うすばらしい大会。すご~い! 松山君自身そうとう自信になったと思う。プロ入りわずかの若い世代が世界の舞台で堂々とプレーしたことは、日本ゴルフ界の誇りであり、私たちにも大きな自信になる。

今季女子ツアーはアマチュア優勝があり、才能あふれる選手がずいぶんいる。その牽引役は石川遼君と松山君だと思う。アマでプロの試合に勝ち、プロ入り後もすぐ勝って大活躍する。今のトップアマはそこを目標としているから、プロの大会で堂々と戦い、結果を出していると思われる。

松山君の掲げる目標は世界メジャー優勝。そこに迷わず邁進している。だから、アマチュア時代にプロに試合で勝っても、プロ入り後すぐ賞金王に輝いても、その成功に固執することなく最短距離で米国ツアーに参戦し、最初のハードルだった米ツアー優勝をもぎ取った。優勝コメントも、つねに頭の中にあるのはメジャー優勝なので、「まだまだ納得できない。メジャーでこんなプレーをしたら優勝は遠ざかっていく。また明日から頑張っていきたい」となる。いやはや恐るべし。

今回の優勝は、前項に当てはめると、(1)メジャー優勝という志。(2)4日間プレーする中でさまざまな場面に出くわしながら、心技体で乗り越えている。(3)プレーオフの18番2打目がグリーン脇にいた女性の太ももに当たり、キックが良いほうに作用した。その運を見事に結果に結び付けたのだ。日本が世界に誇る逸材の、ワクワクする歴史が始まる。

週刊東洋経済 6月21日号

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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