失敗で始まることの大切さ 私のプロデビュー戦は、なんと失格だった

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ゴルフ場では山ツツジがきれいな赤紫のつぼみをいっぱいつけて、春ならではの勢いを感じます。女子ゴルフツアーはすでに6試合が終了し、毎週違う顔ぶれの優勝者が名乗りを上げています。その中、初優勝者は渡辺彩香プロと韓国のリ・エスドプロの二人。また新人戦で優勝したプロ1年生の藤田光理プロはすでに二度の優勝争いに加わる活躍ぶりを見せています。

新人戦といえばプロのデビュー戦。私には強烈な思い出があります。現在、年1回のプロテストでスコア上位から20人が合格しますが、当時は年2回、春と秋にプロテストがあり、3日間でトータル15オーバー以内なら何人でも合格しました。私は秋のプロテストでトータル2アンダーのトップ合格。それも初のアンダーパー合格という記録付きでした。翌日の新聞には記事が自分の写真入りで大きく扱われており、うれしくてうれしくて何度も読み返し、記事を切り抜き、大事に収めました。そしてプロ入り初の試合が新人戦。記録付きでトップ合格した意地がありましたので、自分が優勝するのだ、と決めてかかっていました。

試合が始まると、自宅から近い場所での開催ということもあって力が入りました。ワクワクドキドキでプレーが始まるとさらに気負いが先行し、ショットはバラつきパッティングも決まらない。ホールを重ねるごとにいいスコアに戻そうと焦ってしまい、終わってみればスコアは80の大たたき。情けない気持ちと恥ずかしさでいたたまれず、早々にスコアカードを提出しました。

暗い気持ちで表彰式に臨むと、あるはずの自分の名前が結果表にない。「あれ、おかしい。どうしてないんだろう」。よく見ると枠外に失格の文字。そこに自分の名前がありました。なんとスコアカードに自分の名前を書き忘れて、失格となっていたのです。ガ~ン。

自分が思い描いていたような華々しいプロデビューは飾れず、それも失格という大失敗をやらかし、どうやって家に帰ったか思えていないくらい。これが私のプロデビューでした。出鼻をくじかれる始まりでしたが、よかったことはそれ以来毎試合、必ずスコアと自分の名前、マーカーの名前を確認し、現役が終わるまで失格することなく無事に終えることができたことです。

もう一つとてもよかったことがあります。それは、失敗は怖くない、むしろ失敗で始まったほうがいい結果を生むのだ、という考えに変わったことです。その後日本ツアーで活躍できたこと、米国ツアーで3年間うだつが上がらずの成績の後、優勝を四度重ねることができたのも、最初からはうまくいかなかったからです。うまくいかないことで、いろいろ考え、物事に対して注意深く進むようになり、その後いい結果を生むことができました。なので今でも最初に失敗すると、いい方向に行くかも……?と考えるようになりました。

週刊東洋経済 5月3日-10日合併号

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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