ハーバード大教授の「老いを治療できる」勝算 コロナ・パンデミックで近づく「老いなき世界」

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私の研究室や、私の研究仲間たちが開発した医薬品については、ぜひ地球上の多くの人々に使ってほしいと思っています。現在は、アメリカとオーストラリアで治験を実施していますが、日本から共同研究に参加していただくことも大歓迎です。

老化に対する体の防御メカニズムについては、ワシントン大学の今井真一郎教授の研究が非常によく知られています。NMNと呼ばれる分子についての研究です。

NMNという物質は、老化にともなって失われた細胞を再活性化する、あるいは置き換える役割があります。老化したマウスにNMNを与えると、とても元気はつらつになり、見た目も若くなり、そして、若いときのように走り回るようにもなったという研究があります。

健康長寿のために今すぐできること

私は、長い間、世界で最も健康食であると言われている、沖縄の食生活を取り入れているのですが、ひとつみなさんにアドバイスできることがあります。

大人であれば、なるべく食事の回数は減らしてください。1日3食をしっかり全部食べきるというのは、大人であれば多すぎると思います。

多くの研究からわかっているのは、人は、若干お腹が空いた飢餓の状態におかれていたほうが、老化に対抗する防御メカニズムが働くということです。つまり、老化にともなうさまざまな疾患に対する防御メカニズムが高まるのです。

いままでの人生は短いものでした。1度目で正しい選択をしなければ、その後にやり直すということは許されなかった。でも、より健康に長く生きられる時代になれば、それが可能です。私は、日本語をうまく話せたらなあという夢を抱いていますから、人生が長くなるのなら、ぜひそれを実現したいですね。

私たちは非常にエキサイティングな時代に生きています。なぜ老化するのかが理解できたからです。そして、人類史上はじめて、どうすれば老化のプロセスを遅らせ、長く健康に年を重ねていけるのかを理解しはじめたのです。

科学の世界は大きく飛躍しています。

デビッド・A・シンクレア ハーバード大学医学大学院教授

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David A. Sinclair

世界的に有名な科学者、起業家。老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる。ハーバード大学医学大学院で、遺伝学の教授として終身在職権を得ており、同大学院のブラヴァトニク研究所に所属している。ほかにも、ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長、ニューサウスウェールズ大学の兼任教授および老化研究室責任者、ならびにシドニー大学名誉教授を務める。『タイム』誌による「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出され(2014年)、「医療におけるトップ50人」の1人にも選出されている(2018年)。(写真:アフロ)

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