ハーバード大教授の「老いを治療できる」勝算 コロナ・パンデミックで近づく「老いなき世界」

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なぜ老化にともなってこれだけの苦しみが発生するのでしょう。もちろん、新型コロナだけでなく、一般的な疾病においても、「なぜ高齢化によって疾病をともなうようになるのか」という根本的なテーマを持ち、その原因を探ることが私たちの研究目的です。

最新の研究では、老化のプロセスは遅らせることができるということがわかっています。なぜ老化が発生するのか、そしてまた、なぜ老化を遅らせることができるのかということについて、すばらしい研究成果が上がってきているのです。

私たちの研究チームが科学誌『ネイチャー(Nature)』に発表していますが(2020年12月2日、電子版)、実験室のマウスで「老化の時計」を逆回転させられることも証明されています。老化したマウスの視力が回復することを突き止め、しっかりとしたエビデンスがすでにあるのです。

『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』を執筆した理由は、この心躍るような科学の前進を、ハーバードの学生たちだけでなく、世界中の人々と共有したいと思ったからです。

ほとんどの人たちは、科学の観点でこれほど老化についての知見が広がり、深まっていることを知らないと思います。しかし、この数年でかなりの科学的解明が進んでいるのです。

さまざまな病気の根本原因である「老化」

本書で最も伝えたかったことは、「老化は病気である」と認めることによって、老化に対して、誰もが自分でしっかりとインパクトを生み出せるのだということです。

老化の要素の80%を担っているのは、自分自身の決定であり、そして、残りの20%が遺伝子の決めるところにあるのです。

しかし一般的に、老化は病気ではないと思われています。老化は自然なことなのだという前提を、みんなが心理的に受け入れてしまっているからでしょう。ですから、その根本原因を取り除こうとは考えもしません。

科学の世界では、がんや心疾患、アルツハイマーなど個別の疾患においては研究が進んでいますし、理解も得られています。しかし、その最も大きな根本原因は、ほかでもない「老化」であるということについては無視されています。それが、老化研究が遅々として進まない理由でもありました。

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