ハーバード大教授の「老いを治療できる」勝算 コロナ・パンデミックで近づく「老いなき世界」

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しかし、ひとつの疾患を治療したとしても、寿命に対するインパクトは小さなものです。がんを治癒したとしても、平均寿命は2年しか伸びないのですから。

世界20カ国以上で本書が刊行されましたが、実は、きわめて反響の大きい国と、そうでない国があることに気が付きました。とくに反響が大きい国というのは、おそらく「技術」というものに対して楽観的で前向きな姿勢を持っているのではないかと思います。

例えば、日本は、これまで数々の技術を使いながら問題を解決してきた偉大な国です。そういった国柄ですから、日本の方は、高齢化や老化に対する科学的解明が進むことに対して、非常に強い興味関心を抱かれているのではないでしょうか。

日本は世界一の長寿国ですから、すでにかなり正しいことをやっているのだろうと思っています。老化研究は、病気の根本原因を探り、老化にともなう病気を予防するための研究であり、私たちが目指しているのは、社会や家族とともに、いつまでも健康で生産的な年月を過ごしていくことができるという世界です。

そうなれば社会のためにもなりますし、個人のためにもなるでしょう。人生の終わりに、長らく病気に苦しみ、まわりの家族もそれを目の当たりにしなければならないという状況は、誰もが経験したくないものだと思います。

だからこそ、老化にともなう病気を予防すること、それこそがみなさんが手に入れたい知識ではないかと考えているのです。

老化を遅らせ、治療する薬が登場する

本書に書いたような、老化を治療する時代になれば、おそらく世界全体がもっと幸せで豊かになると私は思っています。

誰も100年前には戻りたくないものでしょう。その時代は、あまりに頻繁に死が訪れていました。将来について考えるときも同じです。80歳、90歳、100歳になった段階でも健康でいられるならば、より幸せな世界になるでしょう。

もちろん、近い将来、すぐに老化が完治するというふうには申し上げられないですが、それでも、世界中で何百人もの科学者や企業が研究を進めています。少なくとも、老化のスピードをゆるやかにする、ある程度の治療を可能にする医薬品は、そう遠くないうちに登場するでしょう。そして、それらは、実は、現在すでに一般的に使われている医薬品の一部でもあるのです。

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