2021年の「ワクチン相場」で勝つ2つのポイント 半年ほど先も見すえながら株式投資をしよう

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2021年の株式市場は、来期の業績回復を織り込みながら上値を試すことになるだろう。来期の業績を見る際のポイントは2つのパターンに大別できる。ひとつめは、新型コロナで大きなダメージを受けた企業だ。

3月期決算企業の場合、ほとんどの企業が4~6月を底にして業績は回復傾向をたどっているように見える。この3カ月との比較で上向くのは当然だが、下期から来期以降へ、回復トレンドが「その強さを保つことができるかどうか」を見極める必要がある。

ふたつめは、テレワークや巣ごもりを追い風にして業績が大きく伸びた、いわば「ウイズコロナ」系の成長企業だ。テレワークや巣ごもりによる売上高の増加は、一時的な特需ではなかったのか、中期的な成長を見込んでも良いのかどうかを考えなければならない。今、市場では「景気敏感株かグロース株か」みたいな議論があるが、二者択一の話では必ずしもない。

物色対象として注目すべきは、景気の回復を業績の回復にしっかりとつなげられる企業であり、一時的な特需で業績が拡大したのではなく時代の変化を捉えた中期成長が見込めるような企業であろう。来期の業績見通しを見れば、このような企業を見分けることができる。

来期業績をイメージして投資対象をイメージしよう

そして、最も無難な投資対象と思われるのが、景気回復の恩恵を受けるが、ポストコロナの中期的な事業環境も明るいセクターだ。例えば、世界的な競争力を保っている半導体や電子部品の企業だ。

テレワークの広がりを受けてデータセンター向けの半導体需要が高まったが、これは一時的な特需ではない。東京エレクトロン(8035)や信越化学工業(4063)が上場来高値を更新したのは当然だ。また自動車向けの電子部品を手掛ける日本電産(6594)や村田製作所(6981)なども、自動車の電動化に伴うモーターやコンデンサー需要の拡大が追い風になる。

さらに、一時業績が急速に悪化したFA(工場自動化)関連企業も、今後は人手を大幅に減らしたスマート工場が主流になっていくと思われ、キーエンス(6861)やオムロン(6645)などは中期成長への期待が膨らむ。ここで紹介した企業については、いずれも直近で上場来高値を更新している。景気回復の恩恵を受けやすい製造業でありながら、ポストコロナの新たな日常を支える高い技術力を誇る企業として中期的な成長が期待できそうなことを考えると、まだまだ上値の余地が大きいのではないか。

「会社四季報」2021年1集(新春号)では、業績の完全2期予想ということで、来期の業績見通しを参考にできる。株式市場ではワクチン効果への期待と感染再拡大への懸念が綱引きをしながらも、景気敏感株と成長期待株への循環的な物色がなお続きそうだ。株価水準が切り上がったことで個別レベルでの選別色は一段と強くなる。来期の業績をしっかりとイメージしながら投資対象を探すことが肝要なタイミングだ。

有沢 正一 岩井コスモ証券 投資調査部長

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ありさわ しょういち / Shoichi Arisawa

1981年大阪府立大学経済学部卒業。1989年岩井証券入社、株式部、調査部などの勤務を経て、2003年イワイ・リサーチセンターセンター長。2017年5月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。株式投資の対象として有望な企業を発掘するため、関西を中心に企業の調査・分析に取り組むかたわら、個人投資家向けに月10回ペースで株式セミナーの講師を務める。

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