連れ子3人を愛すタクシー運転手の数奇な人生 運命のマクドナルドでの出会いから9年
天職とも言えるタクシードライバー
日本交通千住営業所に勤務する高木栄一(52歳)の生まれ故郷は、福島県の中通りにある町だ。中通りまではいいけれど、そこから先の町名は伏せて、名前も仮名にするという約束である。
バブルが崩壊した後の1993年頃に、事実上の完全歩合制が導入されてからは仕事ができるドライバーの給与は大企業のサラリーマン並みによくなったという。当時、高木の営業収入は1カ月に90万円前後あり、ドライバーの取り分が50%強だったから、45万円以上の月収があった。そのうえボーナスも、平均で年間150万円近く出ていた。高木によれば、この頃が日本のタクシー業界の黄金時代であった。
タクシードライバーに仕事ができるもできないもあるまいと思う人がいるかもしれないが、それははなはだしい誤解である。ちょっとした工夫の積み重ねによって、営業収入は大きく変わってくる。タクシードライバーの仕事は、ロジックと直感の組み合わせによって勝負が決まる。高木にはその境界線をうまく歩いていく才能があった。
天職とも言える仕事に出会い、景気のいい時代を経験したこともあって、高木はどっぷりとタクシーの世界に浸ってしまった。
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