連れ子3人を愛すタクシー運転手の数奇な人生 運命のマクドナルドでの出会いから9年

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埼玉県の郊外にある家は、高木の表現を借りれば「マッチ箱みたいな4LDK」だが、3人の子どもはすんなりと高木に懐いた。ただし、高木が実の親でないことを知っているのは、マクドナルドで会ったときすでに5歳になっていた一番上の女の子だけである。

断念

結婚して、すでに9年の歳月が流れた。

「去年の冬は、上の子とふたりきりで受験する高校の下見に行く機会が何度かありましたが、他人同士なのにとても自然な感じで、ふたりきりになるのを嫌がりもしませんでした。とてもいい子なんです」

下の男の子ふたりとも野球をやっている。高木はわざわざ少年野球の指導員の資格を取って、休日はいつも一緒に練習を続けてきた。彼らはいまだに、高木を実の父親だと思っている。いつかは血がつながっていないことを伝えなくてはならないが、いつ、どうやって告白すればいいのかわからない。だから出身地は伏せて、名前も仮名にしてほしいと高木は言ったのだ。

妻が高木の子どもを身ごもったことがあった。しかし高木は、血のつながった子が生まれてくることを望まなかった。

「もちろん葛藤はありました。でも、もしも自分の子が生まれてしまったらかわいいに決まっています。そうなったら、上の3人の子と分け隔てなく育てられるかどうか自信がありませんでした。自分では同じに扱っているつもりでも、よそから見たら『自分の子どもばかりかわいがって』となるかもしれない。遺伝子とか考えたらあれなんでしょうけど、やっぱり3人だけのほうが私自身やりやすいと思って、断念しました」

気の強い妻は、少年野球の父母会の会長を務めた後、昨年、ある国家資格を取って就職を決め、正社員として働き始めた。高木の給与が頭打ちの分、妻が頑張っている。

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