連れ子3人を愛すタクシー運転手の数奇な人生 運命のマクドナルドでの出会いから9年

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ほとんどのタクシードライバーが、「タクシーの仕事はきついけれど気楽だ」と言う。いったん営業所を出てしまえば、誰の指示も監視も受けないからだ。

もっとも最新式のタコメーターは飛行機のフライトレコーダーのようなもので、ドライバーの1日の行動を正確に記録してしまうし、GPSによってつねに現在位置を見張られてもいる。それでも、オフィスに座って上司の視線を気にしながら1日過ごすことや、工事現場でゼネコンの現場監督にドヤされながら仕事をするのに比べれば、やはりタクシーは気楽だろう。

気楽な仕事について、しかも稼ぎのよかった高木はよく飲み歩いた。そして、ふと気づけば40歳を迎えていた。

「好き勝手をして、ちょっと遊びすぎたなと思いました。交際した相手は何人かいたのですが、タイミングが合わなかったりして結婚には至りませんでした」

運命のマクドナルド

さすがにそろそろ身を固めねばと思った高木は、大枚をはたいて結婚相談所に会員登録することにした。

「40歳のときに、30万払って会員になりました」

本気である。

会員のプロフィールを閲覧しているうちに、高木の目がある女性の顔写真の上で止まった。少々気は強そうだけれど、高木の好きなタイプの顔である。ただし、彼女には離婚歴があった。いわゆるバツイチだ。高木は初婚だったが、バツイチ自体はたいした問題ではなかった。問題は、彼女が5歳の女の子を筆頭に、3人の子持ちであることだった。

高木よりもちょうど10歳年下の彼女は、幼い3人の子どもを抱えて働きに出ることもできず四苦八苦しているとプロフィール欄に書いていた。高木は迷った。到底、条件がいい相手だとは言えない。でも、一度会ってみたいという気持ちを抑えることができなかった。

「会ってみたい」とメールを打つと、「会ってみましょうか」とすぐに返事が戻ってきた。実際に会う日まで、メールのやり取りはこの1回きりだった。

彼女が待ち合わせ場所として指定してきたのは、なぜかマクドナルドであった。初めての面会の場所としては、どうにもこうにも色気に乏しい。だが、理由はすぐに判明した。マクドナルドに現れた彼女は、3人の子どもを全員連れてきたのだ。子どもたちは泣き出しもせず、楽しそうにはしゃいでいた。

「子どもに構えられたら嫌だなと思っていたのですが、コーヒーを倒してしまうぐらいはしゃいでいましたね」

次ページ想像していたとおりの、少々気の強い美しい女性だった
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