連れ子3人を愛すタクシー運転手の数奇な人生 運命のマクドナルドでの出会いから9年
そして、彼女は高木が想像していたとおりの、少々気の強い美しい女性だった。
「初対面でいきなり子どもを3人連れてきたので、正直びっくりしました。でも、なぜだかわかりませんが、私は彼女と1回でも会うことができたら、そのまま結婚しようと思っていたのです」
彼女と会った瞬間に心は決まっていた
高木は、同僚たちと福島にいる兄に相談した。同僚のほとんどは、
「3人の子持ちなんて、お前、なに考えてるんだ」
という反応だった。
しかし、田舎の兄の反応は違った。高木の実家は貧しい農家である。高木を含めて男4人の兄弟だが、長男は後を継がず、いまは4男が両親と一緒に暮らしている。しかし、うつ病を患っている4男は一切農作業を手伝わない。完全に自信を喪失していて、いつも「俺はダメだ」とつぶやいてばかりいるという。
長男が言った。
「本当に子どもを3人引き取ってやっていけるかどうかはわからないが、その年でそうそう結婚のチャンスはないだろ。かまわね、やればできるんじゃないか」
「どうすっかな」
高木は一応悩んでみたけれど、実はそれはうわべだけのことにすぎなかった。会った瞬間に心は決まっていたのだ。
「もう40過ぎなんだからやるしかねえべ」
飲み歩いてばかりいた高木の生活は、結婚したとたんに激変した。いや、変わったというよりも、高木が無理やり変えたのだ。景気づけというわけではないが、いきなり一戸建ての家を買ってしまったのだ。住宅ローンが終わるのは、実に75歳のときである。それまでは、とにかく走り続けるしかない。
一方、彼女のほうは筋金入りの気の強さで、「結婚できてよかった」とか「あなたのおかげで救われた」といった言葉は一切口にしなかった。
「あなた、親になったんだから責任あるんじゃないの?」
これが彼女の口癖になった。
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