経済再興には「両利きの経営」が不可欠な理由

話題の戦略論を日本への紹介者が解き明かす

日本経済の再興には「両利きの経営」が不可欠……その理由とは?(写真:まちゃー/PIXTA)
既存の業界秩序が破壊される時代、既存事業の「深化」により収益を確保しつつ、不確実性の高い新領域を「探索」し、成長事業へと育てていく「両利きの経営」が、コロナ時代を生き抜くイノベーション論として、経営界の話題となっている。
この「両利きの経営」研究の第一人者であるチャールズ・オライリー、マイケル・タッシュマンの著作の邦訳『両利きの経営――「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』が、2020年10月にビジネス書大賞の特別賞(ビジネスリーダー部門)を受賞した。
今回は、同書の解説者の1人である冨山和彦氏が、オライリー教授との関わりと日本語版出版の経緯から紹介し、両利き戦略を実践するための企業の大改造「コーポレート・トランスフォーメーション」の必要性までを提唱する。

10年前の築地の夜

もう10年近く前だろうか、スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授から「新しい本を書いているのだが、Kazの産業再生機構での経験を参考にしたいので、今度、日本に行く機会があるから時間を取ってほしい」と夫人であるウリケ・シェーデさん(UCサンディエゴ教授)を通じて依頼が来た。

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その本こそ、のちに“Lead and Disrupt”(邦題『両利きの経営』)という名前で世に出る本書の原著である。

チャールズが掲げた問題意識は、「なぜ、圧倒的な顧客基盤と経営資源を有するナンバーワン企業の多くが、時代の変化、とりわけ破壊的イノベーションの波に飲み込まれ、華々しい衰退に追い込まれるのか?」という点にあった。

当時の産業再生機構の案件の中で最も注目を集めた2つの案件、かつて日本最大の民間企業であるカネボウ、そして自らが破壊イノベーターとして登場し、わが国の小売業ナンバーワンとなったダイエーが、いずれもなぜあのような衰退に追い込まれたのか?のと本質的に同じ問いである。

そのうえで、卓越した社会科学者であるチャールズの疑問は、「その一方で、破壊的イノベーションの波を生き延び、成長力に転化する既存の大企業もあるが、衰退と繁栄の境目は何なのか?」へと展開していった。

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