男性不妊を引き起こす「精巣周りのコブ」の正体 検査で「精子に異常」見つかる人の約3割の原因

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もちろん、この研究だけをもって、ブリーフをはいている男性の精子は元気がない、というわけにはいきません。何度も何度も同様の試験が行われ、その結果がいつも同じであるという、事実の蓄積により科学的根拠が得られるのであって、ニュースになるような研究はあくまでも、それが本当かどうか、追試してみようというキッカケにはなっても、事実とは言えないからです。

ですから、皆さんも、新聞やテレビ、雑誌で、医療関係のニュースとして扱われる研究は事実でなく、それが事実かどうかを知るための過程のひとつであることを覚えておいてください。

精索静脈瘤はどうやって発見される?

さて、話が少々脱線しました。元に戻しましょう。精子をつくるのに障害を引き起こす原因として最も多いのが、先ほどから話に出ている精索静脈瘤という病気です。この病気は精巣から心臓に戻る精巣静脈内の血液が逆流してしまい、精巣の周りに静脈のコブ(精索静脈瘤)ができるのです。

そうなると、お腹から逆流した温かい血液が精巣内に滞留して、精巣の温度を上げてしまうのです。それにより精子をつくる機能が低下したり、精子のDNAが損傷して元気がなくなったり、男性ホルモンの分泌が低下したりするなどの問題が出てきます。

自覚症状は多くはありません。ただデスクワーク中心で座る時間の長い人のなかに、陰囊の鈍痛や違和感などをキッカケに病気が発見されることがあります。実際、過去にはこんな患者さんがおられました。

「先生、このところ陰囊を握られているような不快感があります。どこが、というわけではないのですが、何となくキューッと痛むことがあるんです。年齢的にも癌じゃないか、と思うのですけど……」

40代の男性患者さんは、自分の症状をこう訴えます。異変が起こるのは決まって職場だそうです。家では何ともないのに会社でデスクワークを始めてしばらくすると、締め付け感があると言うのです。

「最近は間隔が狭まっている気がします。先生に診てもらいたいのです」

違和感は、左の陰囊のみで、発熱もないとのこと。セックスも長くしていないとのことですから、性感染症の可能性はなさそうです。男性の陰囊を触診すると、左のほうが右より下がっていて大きさも大きい。左の睾丸の下にはフニャフニャとした柔らかいものを感じます。もはや疑う余地はありません。病名は明らかです。

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