男性不妊を引き起こす「精巣周りのコブ」の正体 検査で「精子に異常」見つかる人の約3割の原因
- 「精索静脈瘤ですね。座り仕事が多いんじゃありませんか?」
- 「その通りです。なぜわかったのですか?」
- 「この病気は生まれながらという人もいますが、座る時間が長い人もなりやすいからです。ただし、過度に心配しないでください。精索静脈瘤自体は一般男性の約15%に認められ、それほど珍しいものではありません。普通に性交渉ができて、子どもがいる人なら問題ありませんよ」
ただし、妊活中の男性は注意が必要です。男性不妊患者の40%以上に見られ、2人目不妊の78%は精索静脈瘤が原因とされているからです。基本的に精索静脈瘤は、90%以上左側の陰囊に発症しますが、自分に精索静脈瘤があるかどうかの見極めはどうすればいいのでしょうか? ポイントをお教えしましょう。
根治するには手術が必要
まず、片方の陰囊が常に垂れ下がっている状態であること、垂れ下がっている陰囊のほうが大きいこと、陰囊を触ると、精巣のそばにグニュグニュとしたうどんのようなコブを感じること、垂れ下がっているほうの陰囊の睾丸の大きさが小さいこと、などです。
いずれにしても男性不妊の原因と診断されれば治療の対象となります。精子の質を良くするには、サプリメントや漢方が使われますが、根治するには手術(術式で保険適用あり)が必要です。
精索静脈瘤の手術にはいくつかのやり方がありますが、主流は合併症や再発率が最も低い顕微鏡を用いた、「低位結紮(けっさつ)術」と呼ばれる方法です。この手術を行うと6〜7割の人に精子の数や運動率などの改善が見られます。
この手術は、全身麻酔もしくは局所麻酔で行います。鼠経部(太ももの付け根)を1〜2センチ切開して、精索という膜の中にある精巣静脈のみを結んで結紮切断(縛って間を切る)します。
精巣動脈の周囲にある細かい静脈も、顕微鏡を使って確実に結紮切断することで静脈瘤は消失します。手術時間は1時間程度で、事務職の人なら翌日から仕事が可能。再発率は2%以下だとされています。
精索静脈瘤の話題が出たので、男性不妊について少しだけお話ししましょう。男性の患者さんから、「大人になってからおたふく風邪にかかると、子種がなくなるというのは本当ですか」と、質問されることがあります。
私の答えは、「合併症を起こした場合は、その可能性がある」です。おたふく風邪の正式な病名は、「流行性耳下腺炎」です。ムンプスウイルスの感染で起こる感染症で、主な感染経路は、インフルエンザなどと同じで飛沫感染と接触感染です。たいていの人は子どもの頃にかかり、一度感染すると免疫ができるので、基本的に再感染はしないと言われています。
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