丸美屋「のりたま」が絶対王者を譲らないワケ ふりかけの超定番、風味と訴求で攻め続ける

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「のりたま」を構成する主な原材料。上段左から「たまごそぼろ」「たまご顆粒」、中段左から「ホロッとたまご顆粒」「のり」「さば削り節」、下段左から「抹茶塩」「ごま」(写真:丸美屋食品工業)

コロナ禍で厳しい業績となる企業も多いが、丸美屋食品工業の業績は好調だ。2019年度の売上高は514億円と20年連続増収を記録。今期も増収が、ほぼ確実視されている。

興味深いのは、従業員数と本社の立地だ。従業員は約400人と、売り上げ規模500億円のメーカーにしては非常に少ない。

また、本社を構えるのは東京都杉並区の住宅街だ。企業規模が大きくなると、都心の高層ビル上層階に本社を移す食品メーカーもある。時に「一般消費者の気持ちが肌感覚でわかるのか?」と感じるが、そうした移転姿勢も見せないのだ。

「社員同士の仲が良く、各自が責任感を持ちつつ、気軽に相談し合える関係性をもっています。そんな雰囲気の中で、ふりかけや麻婆の素、中華の素、釜めしの素といった基幹商品を中心に、多くの商品を展開しています」(広報宣伝室課長・青木勇人さん)

視界良好に思える同社にとって懸念材料は「消費者のコメ離れ」だ。コメ消費量の推移を農林水産省の公式サイト「消費者の部屋」Q&Aから紹介しよう。

「国民1人・1年あたりの米の消費量は、1962(昭和37)年度の118.3㎏をピークに一貫して減少傾向にあります。1990(平成2)年度には70.0㎏、2005(平成17)年度には61.4㎏、2018(平成30)年度には53.5㎏まで減少しています(後略)」

つまり最盛期の半分以下、平成年間でも約24%減った。丸美屋のふりかけは、パスタの味付けなどにも応用できるが、最も合うのは白米。主食であるコメ消費の減少は問題だ。

ふりかけの未来予想図はどうか

それでも伊藤さんは前向きだ。

「私は、ふりかけには将来性があると思います。この値段で、ごはんが楽しめるワクワク感は、他の商品ではなかなか実現できないからです。これからもおいしさを追求していきます」

会社としても知見を積んできた。「のりたま」では大失敗はないが、「ふりかけ」ではうまくいかなかった新商品もある。消費者の「健康志向」を意識して、乳酸菌入りを訴求した際は届かなかった。「それは、ふりかけには求めていない」ことを学んだという。

コロナ禍での消費生活を見て、筆者は一部の活動は「昔の日本に戻った」と感じている。例えば、都市部の住宅街でキャッチボールをする親子は、久しぶりに何度も目にした。

ブランドとして還暦を迎え、昔の日本を支えてきた「のりたま」が、一段と輝き続けられるのか。60周年の「“ご祝儀買い”が終わってからが本当の勝負」だろう。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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