「インフルエンサー」への信頼感が弱まった理由 「Z世代」の若者が求めている「共感」の正体

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しかし、フォロワーがかなり多いインフルエンサーではなく、フォロワーが多くなり始めたばかりのインフルエンサー未満を起用するということは、個々に支払う値段は少なくなるものの、商品情報を広く拡散させるために、インフルエンサー以上にたくさんのインフルエンサー未満を起用しないといけなくなるため、マーケティング効率が大変悪くなることを意味します。

手間はかかりますが、Z世代の信頼感を得るために、このインフルエンサー未満を起用したマーケティングが求められるようになっているのです。

また、Z世代がより自分に近いインフルエンサー未満を求めるようになっているということは、彼らは大変強く共感を求めるようになっている、ということが言えます。

「TVタレントより身近な存在のインフルエンサーが共感を呼ぶ時代」と少し前に言われていましたが、Z世代はもっと身近な存在であるインフルエンサー未満を参考にするようになっていることを考えると、「超共感」を求めている時代、と言えるかもしれません。

関心のある情報しか見ない

確かにZ世代にとって、この「超共感」というのは、重要なキーワードになっています。なぜなら、スマホ第一世代である彼らは、スマホやSNSで企業やメディアからターゲッティングされており、「自分の見たい情報」だけを見て生活するようになっているからです。

「自分の見たい情報」――つまり、やや極端に言えば、自分が絶対に共感する情報にしか触れずに生活しているZ世代は、自分にとって違和感のある情報に接すると、大きな拒絶反応を示すようになっているのです。

『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

テレビをつけると、自分にまったく関係のない健康商材のCMをたまたま見てしまうことがあるのと対照的に、Z世代は自分たちが関心のある情報・ニュース・広告しか見ない(見られない)ようになっているのです。

「恋愛リアリティーショー」の普及も、彼らが「超共感」を求めるようになったことを示しています。ネットフリックスやフジテレビの「テラスハウス」、アマゾンプライムの「バチェラー・ジャパン」、ABEMAの「オオカミくんには騙されない♥」「今日、好きになりました。」など、出演者に対するSNS上での誹謗中傷が問題になりながらも、今、「恋愛リアリティーショー」は全盛期です。

「本当は台本があるのではないか?」などと言われているものも中にはありますが、少なくともZ世代の多くはこれら「インフルエンサー未満(番組に出て有名になるとインフルエンサーになる)」の人たちや、リアルな細かい心の動きやシーンに超共感しているのです。

私が日頃、彼らと一緒に彼ら向けの広告を作っている時も、本当にわずかなディテールに違和感があると、彼らはその広告への興味を一気に失う、ということをよく目撃します。企業がなんとなく「Z世代はこんな感じだろう」と、甘い気持ちで彼らを狙った広告を作り、彼らの感覚と大枠は合っていたとしても、ディテールがずれていたら、逆にネガティブな評価になってしまうことがよくあるのでご注意ください。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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