過去の賢人に学ぶ「成長追わない社会」の作り方 沈みゆく資本主義の船にしがみついていいのか

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大阪市立大学准教授の斎藤幸平氏(左)と東京工業大学教授の中島岳志氏
「コロナ禍や気候変動の原因は、人類の経済活動が地球を破壊していることにある」。そう語るのは、新著人新世の「資本論」』を上梓した斎藤幸平氏だ。資本主義のもと、現代人が無限の経済成長を追求したせいで、環境危機を引き起こし、地球を人間が住めない場所にしつつあると指摘する。しかし、資本主義を捨てた文明に繁栄はあるのか。「解決策は晩期マルクスの思想の中にある」と斎藤氏は言う。それはいったいどういうことなのか。政治学者・中島岳志氏との対話でひもといていく。

環境危機を引き起こしたのは資本主義

中島:2020年がどんな年だったかを振り返る際に、春からコロナ禍と夏の異常なまでの酷暑、つまり気候変動を抜いて考えることはできませんが、この2つを根源的に考えるにあたって、斎藤さんの新著『人新世の「資本論」』は、絶好の1冊です。コロナ禍についても、気候変動についても、非常に的を射た分析になっていると思います。

斎藤:ありがとうございます。端的に言えば、コロナ禍も気候変動も「人新世(ひとしんせい)」の時代の産物です。地質年代「人新世」とは、地球の表層が人間の経済活動の痕跡、つまりビルやダム、農地によって覆われてしまったという意味で提唱されている用語です。大気中の二酸化炭素も、人間の経済活動のせいで急増しています。

気候変動に代表される環境危機をここまで悪化させた原因は、無限の経済成長に社会を駆り立てた資本主義です。 資本主義は、際限なく利潤を追い求めるシステムですから。

自明な事実として、地球は有限なので、ここ30年間くらいの行き過ぎたグローバル化の矛盾が露呈するようになっている。新型コロナウイルスのパンデミックもしかり。自然の奥地の森林を切り開いていけば、未知のウイルスが表に出てくるのは当然のことです。人々が豊かな生活を送るために無限の経済成長を追求することによって、逆にこの文明そのものが脅かされています。

このことが、先進国にいても、誰の目で見てもわかるくらい可視化されたのが、2020年でした。「人新世」という言葉が、欧米のメディアで頻繁に登場するようになっているのもそのためです。そして、当然、資本主義そのものに抜本的な修正を加えないと、この危機は解決できないという議論が支持を集めるようになっている。

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