人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる

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これは「集団vs.集団」と「個体vs.個体」という2つのレベルの競争が同時に働く中で、種全体とかもっと大きなメタ集団のなかでどんな遺伝子の戦略が生き残っていくかを研究した理論で予測したのですが、私たちの実験はその理論を裏付けて実証したわけです。

これらの研究成果は観察だけでは達成できません。「動的ゲーム理論」という複雑な数式を使う数理モデルで分析して、結論を導き出しています。

アリの社会でも「国際分業論」が成り立つ?

――今はどんな研究をされているのですか。

現代の人間社会で一般的になった「グローバル経済」がアリの社会でも起きているのではないか。今はそれをテーマに研究しています。国際分業によって生産性を最大化させる、国際経済学の「国際分業論」。それが成り立つかどうか、アリの巣を使って検証しているんです。

辻氏が研究するアリの一種、トゲオオハリアリ(写真:当銘寿夫)

経済学はマクロになればなるほど、そのモデルが正しいか否かについて、実際の社会で実験して確かめることができません。

国際分業する国と分業しない国を、条件や背景を一定にしながら、何年も両方の国の経済状況を観察することは難しいですよね?

でも、アリならできるんです。経済学モデルの通りにアリに行動させたときに、効用が高まるか、つまりアリの個体数が増えるかということを観察していくことで、そのモデルが正しいかがわかります。

もしモデルと違う結果が出たら、モデルの仮定が間違っていたのではないかということも指摘できる。

実は、ヒアリやアルゼンチンアリの世界では、巣同士で分業が強く働いているであろうされています。彼らには侵略性もある。こうしたメカニズムを解き明かすことにつながるのではないかと考えています。

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