ドンキ前社長「知人に株購入勧め逮捕」の妥当性 知っておきたい金融商品取引法のポイント

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逮捕容疑は2018年8月上旬、ユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)との間におけるTOBや、同社子会社の総合スーパー「ユニー」の株をドンキが取得して完全子会社化する重要事実を知り、知人に利益を得させる目的で株の買い付けを勧めた疑いになります。

このTOBでは、ユニー・ファミリーマートHDが同年10月11日、ドンキ株の20%にあたる約3210万株を約2100億円で取得すると公表しました。一方、ドンキHDも同日、ユニー・ファミマ傘下のユニー株をすべて取得し、ユニーを完全子会社化すると公表しました。

大原容疑者はドンキ社長だった同年8月頃には、TOB実施やドンキ側によるユニーの完全子会社化を知っていたのに、その公表前に複数回、知人にドンキ株の購入を勧めたといわれています。その知人は8月中旬の会食で、大原容疑者から「うちの株、ちょっと安いですよ」と言われ、その後に電話でも株購入を勧められたといいます。

働きかけの意図があったと考えられてもしかたない

大原容疑者は逮捕前、「知人に利益を得させる目的はなかった」「自分には(知人をもうけさせる)動機がない」「8月の知人との会食で『今の株価と業績を考えたら買っておいたほうがいい』とは言ったと思うが、その後の電話で何を言ったのか覚えていない」と話したと伝えられています。

自社の株について複数回にわたり話をしていること、さらには会食時だけでなく、わざわざ電話でまで話していることが事実だとすると、働きかけに意図があったと考えられてもしかたがないでしょう。

ユニー・ファミリーマートHDが10月11日にTOB実施を発表すると、ドンキ株の同日の終値は前日の6050円から6680円に上昇しました。

そして、実際にその知人は、9月上旬から10月上旬までの間に、およそ4億3000万円で7万6500株を買い付け、その後同株を売却することにより約6000万円の利益を得たといいます。さらには、この知人から勧められた親族らも利益を得ていたとの報道もあります。

なお、このTOBはこの年の11月7日から12月19日まで行われましたが、株価の市場価格が買い付け価格の6600円を上回る水準で推移し、当初想定していた買い取り株式数に満たなかったため、不調に終わっています。

では、なぜTOBが発表されると、株価が上昇するのでしょうか。

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