ドンキ前社長「知人に株購入勧め逮捕」の妥当性 知っておきたい金融商品取引法のポイント
最初は取引額を小さくしたり、親族や海外の口座を使ったりして発覚を免れていたとしても、取引記録が積み重なるにつれ捕捉の可能性は上がります。回数を重ねるうちに、やり方が雑になってしまうのです。
ましてや、今回のように4億円を超えるような株購入代金を一般の人が用意することは不可能で、なぜ前社長の知人が、目をつけられることを警戒しなかったのか疑問にすら感じます。
大原容疑者は、繰り返し「知人に利益を得させる目的はなかった」と話しているようですが、会食時だけでなく、電話を含め複数回にわたり株の購入を勧めていたこと、実際に知人が多額の利益を得ていることを合わせて考えると、この言い分が通るとは考えにくいでしょう。「10月11日までに購入するように」とTOBの発表を意識して推奨していたとの報道が事実であればなおさらです。
「そんな法律があるとは知らなかった」は通らない
また、大原容疑者は 「そんな規制があることを知らなかった」とも話しているといいます。確かに、日本の刑法は「罪を犯す意思がない行為は罰しない。」(刑法38条1項本文)と規定し、故意がある場合に犯罪が成立することを原則としています(過失による処罰の規定などがあれば、法律に特別の規定がある場合として処罰されます)。
しかし、「そんな法律があるとは知らなかった」「自分の行為が処罰されるとは知らなかった」という言い分が通るかというと、そうではありません。故意とは、「処罰される犯罪の構成要件に該当する具体的事実の認識、認容」をいうのであり、処罰される法律を知っていたことではないからです。
例えば窃盗を例に挙げると、「他人の物を盗る」という認識が故意であり、「窃盗罪で処罰される」という認識は必要ないということです。
今回のケースでも、大原容疑者が、知人にドンキ株の購入を勧める認識さえあれば、そのことが規制されるかどうかについての認識は問われないということになります。
今回の容疑に関する法定刑は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方となっています。前述のスミダコーポレーションの元社外取締役の事件では、本人に刑事有罪判決が下されたほか、会社から善管注意義務違反などを理由に8000万円を超える損害賠償の請求がなされていました。
大原容疑者に対しては、これから検察庁により刑事訴追されるかの判断がなされ、会社側も損害賠償請求をするかを決めることになるでしょう。同容疑者にとっては、今後刑事・民事両面において厳しい裁判が待ち受けていることが予想されます。
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