ドンキ前社長「知人に株購入勧め逮捕」の妥当性 知っておきたい金融商品取引法のポイント
ドンキホーテホールディングス(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)に対する2018年の株式公開買い付け(TOB)をめぐって、公表前に自社株の購入を知人男性に不正に勧めた金融商品取引法違反(取引推奨)の疑いで、ドンキ前社長の大原孝治容疑者が逮捕されました。
金融商品取引法は、TOBなど上場企業の未公表の重要事実を事前に知った会社関係者が、利益を得させる目的で重要事実を伝えたり、他人に株取引を勧めたりする行為を禁止しています。
重要事実とは、今回のようなTOBの事実のほか、業績の上方・下方修正、配当の情報、業務提携の事実などがあります。
取引推奨の疑いで逮捕者が出たのは2例目
一般の投資家は、公表されなければ重要事実を知ることができませんから、情報を知る一部の人だけ先行して株取引を許してしまうと、一般の投資家にとって不公平な結果となるのは当然です。このような結果にならないよう金融取引市場の健全性、関係者の信頼を守るためのルールがインサイダー規制なのです。
そして、重要事実を知る人自身が株式を取引することを禁ずるだけでなく、重要事実を他人に伝えたり、株取引を勧めたりする行為自体も処罰するよう2014年に法改正がなされました。取引推奨の疑いで逮捕者が出るのは、2018年にスミダコーポレーションの元社外取締役が逮捕されて以来、2例目です。
なお、勧められて株取引をした側は重要事実を知らない限り、処罰対象とはなりません。今回株を購入した前社長の知人は、勧めに応じて株式を購入していても、具体的な重要事実(TOB)を知らなければ、罰せられないのです。
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