新型コロナ対策を機軸として東アジア全体の連結性が高まる中、同月15日、ASEAN10カ国に日中韓、豪州、ニュージーランドを加えた15カ国は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定に合意、署名した。世界の人口とGDPのともに3割を占めるこの経済連携協定は、東アジア地域の連結性をさらに高める効果を及ぼすと考えられる。
今後の新型コロナ危機の状況とRCEPの発展の様相次第では、2020年は、日本がより大きく東アジア地域に結合されていく「日本のアジア化」の転換点として認識される年となるかもしれない。
東洋でも西洋でもない日本の戦略的立ち位置
日本は、速度が増す「日本のアジア化」と、新型コロナ対策の東アジアの成功を好機と捉え、感染症危機管理をめぐる国際保健外交においても最大限活用するのが望ましい。しかし、東アジアと欧米という安易な二項対立の考え方は、大局的には日本の利益に資さない。
孫文が「西洋覇道の鷹犬となるか、或は東洋王道の干城となるか」と迫ったように、近代化以降の日本の歩みは、自身の国際政治的立ち位置を東洋(東アジア)と西洋(欧米)のどちらとして認識するのかという東西アンビバレンツの歴史であった。
日本は、地理的・文化的には東アジアに生きる一方、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を掲げ、開かれた国際経済システムの恩恵を受けることで発展を遂げてきたのであり、政治・経済体制において同様の規範を掲げる欧米の自由民主主義諸国との連携は重要だ。安倍政権ではこれを「自由で開かれたインド太平洋」構想として具体化し、東アジア地域の国々を巻きこみながら、欧米の自由民主主義諸国の賛同を得つつ、自由で開かれた国際秩序を追求してきた。
純粋な東洋でも西洋でもなく、両者を止揚する立場に生きることが日本の戦略的立ち位置であり、生存と繁栄の道である。
このような日本の戦略は、感染症危機管理をめぐる国際保健外交においても同様に実行されるのが望ましい。日本は、自身との連結性が増す東アジアを世界の感染症危機管理の中でどのように位置付けて活用するかについて構想し、欧米を包摂していくような国際保健外交を展開する必要がある。
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