東アジアと欧米、コロナで明暗分けた決定要素 国際的な感染症危機管理ガバナンスを構築せよ

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国際社会におけるこれまでの感染症危機管理ガバナンスでは、パンデミック等の世界的感染症危機が自国の国家安全保障に及ぼす悪影響に対して強い脅威認識を抱いてきた欧米諸国が、国際公共財を構想し、提供してきた。例えば、感染症危機管理の国際枠組み「グローバル・ヘルス・セキュリティ・アジェンダ」(アメリカ主導)や、新型コロナワクチンを世界各国に平等に融通する国際枠組み「COVAXファシリティ」(欧州主導)などだ。

東アジアは、欧米主導の枠組みに参加したり、欧米のモデルを採り入れたりすることはあったが、感染症危機管理に関する国際公共財を自ら提供したことはなかった。日本も、G7伊勢志摩サミットで感染症危機管理の重要性を説き、WHO危機対応基金やCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)の創設の際に拠出する等の重要な役割を果たしてきたが、世界的な感染症危機管理ガバナンスの仕組みを自ら構想し、仲間を集め、創設するための主導権を取ってきたわけではなかった。

しかし、東アジアにおける新型コロナ対策の成功の教訓を世界に共有するという国際的な要請は、東アジアが提供するモデルを欧米が学ぶという、感染症危機管理ガバナンスに関するこれまでとは逆の形態を促している。

日本は国際社会の安全向上に力を尽くせ

日本は、この機会を捉え、東アジア諸国とともに新たな感染症危機管理ガバナンスの構築を主導し、国際社会の安全向上に力を尽くすのが望ましい。それは例えば、東アジアの「社会全体でのアプローチ」のような、感染症危機管理の成功の「型」を「ケーススタディー」として体系化し、集積したナレッジ・ハブを創設し、国際公共財として欧米等の世界の他地域に提供することなどが考えられるだろう。東アジアは、地域の枠を超えた国際秩序構築に対してより積極的な役割を果たすことができるし、欧米は、東アジアにもっと学ぶことができる。

東アジア発の感染症危機管理ガバナンスは、東アジア地域だけで完結するような取り組みではなく、開放的で透明性があり、欧米諸国を包摂するものであることが重要である。新型コロナ対策で成功した教訓を集積・普遍化し、新型コロナ危機によって閉じた国際社会を再び開かれたものとするために、東洋と西洋の協働と互恵的な関係構築を促す枠組みを創成することは、日本の戦略的な利益にも資する。

(阿部圭史/アジア・パシフィック・イニシアティブ客員研究員)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
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