新型コロナ危機対応に成功する東アジア
新型コロナ危機によって、世界のパワーバランスに新たな趨勢が生まれている。東アジア諸国が、欧米諸国に比して国内の感染症危機対応に成功しているためだ。ブルームバーグ通信が本年11月に発表した、感染症危機対応と経済対策の両面からみた各国のランキングでは、上位15カ国・地域のうち、10カ国・地域が東アジアである。
ここで言う東アジアとは、日本、中国、韓国、台湾、ベトナム、シンガポール、香港、タイ、オーストラリア、ニュージーランドである。これらの大半は、21世紀に入り、何らかの大規模な感染症危機を経験していた。
中国、香港、台湾、ベトナム、シンガポールは、数十人~数百人規模で重症急性呼吸器症候群(SARS)の事例を経験した(震源地の中国に至っては5000人以上)。韓国は、2015年に約200人に及ぶ大規模な中東呼吸器症候群(MERS)アウトブレイクに見舞われた。タイは、少数例だがSARSを経験すると同時に、公衆衛生・国際保健分野で長年アジアをまとめてきた老舗だ。大規模な感染症危機を経験し脅威認識を増したこれらの国々は、後に国全体の感染症危機管理体制を強化し、今回の新型コロナ危機に臨むこととなった。
一方、日本は、幸運にもSARSやMERSの流入を経験しなかった。政府の新型コロナ対策を検証した新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)の報告書によれば、日本の感染症危機管理能力向上に重要な意味を持ったのは、H1N1新型インフルエンザパンデミック(2009年)と西アフリカのエボラ出血熱アウトブレイク(2014年)である。
ただ、前者で実施された大規模なオペレーションを総括し、体制強化を提言した「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書」の内容は、多くが活かされていなかった。それにもかかわらず、新型コロナ危機では低い死亡率を保ち、危機対応に従事する関係者と国民1人ひとりの奮闘で日本は何とか持ちこたえている。コロナ民間臨調は「泥縄だけど結果オーライ」で再現性が保証されないと評したが、死亡率を低く抑えるという結果に照らせば、成功国の1つとなっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら