新型コロナウイルスの感染者が国内で発生してから1年が過ぎた。このわずかな期間に水際対策からウイルスに関する情報の共有、ワクチンの開発・生産まで、感染症の危機管理がいかに国を守る、あるいは、発展させるうえで重要か、誰もが痛感しただろう。本連載では感染症危機に関する国家安全保障や危機管理の側面からの考え方や、感染症危機をめぐる国際政治について紹介していく。今回は感染症危機管理とは何かを考える。
未知の感染症が発生した
発生7日目。アメリカCDC。未知の感染症への危機管理オペレーションを率いるチーヴァー博士に近づく者あり。
「チーヴァー博士。お話が」
「あなたは?」
「国土安全保障省のデニス・フレンチです」
「一体何事ですか?」
「危機管理センターでハガティ海軍少将がお待ちです。詳しくはそちらで」
CDCの危機管理センター。アメリカに加え、香港でも発生している未知の感染症の写真を精査しながら、話題は、マカオのカジノで従業員3名が死亡した事案へ。
ハガティ海軍少将:「国土安全保障省は強い懸念を抱いている」
フレンチ:「爆弾テロのように、テロリストが自ら感染症になりカジノを歩いて菌を撒き散らすことも可能だ」
チーヴァー博士:「従業員3名の死亡原因は?」
フレンチ:「発作や昏睡のようです」
ハガティ海軍少将:「WHOに連絡し、情報を待っている」
フレンチ:「感謝祭の時期を狙ったのでは?」
チーヴァー博士:「狙うとは?」
フレンチ:「攻撃です」
ハガティ海軍少将とチーヴァー博士が互いに目を合わせて訝る。
フレンチ:「鳥インフルエンザの兵器化とか」
チーヴァー博士:「兵器化の必要はない。すでに鳥がやっている」
映画『コンテイジョン』の一幕だ。
新型コロナなどの感染症危機は、その原因が自然発生的な場合もあるし、人為的な場合もありうる。どちらであれ、発生後の危機管理オペレーションは、人為的な場合に司法当局の捜査や防衛当局が関与する以外は、大まかには変わらない。
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