日本が米大統領選のサイバー攻撃対策に学ぶ事

民主主義への外なる敵と内なる脅威に備えよ

日本は政府全体のサイバーセキュリティ体制と社会全体のデジタル耐性を強化する必要がある(写真:iLexx/iStock)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

アメリカはサイバー攻撃の対処レベルを格段に上げた

トランプ大統領は選挙には不正があったとして敗北を認めず、選挙の公正性を保証したサイバー・インフラセキュリティ庁(CISA:Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)のクレブス長官を11月17日夜、更迭したことをツイッターで明らかにした。

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2016年にロシアの介入を許したアメリカは、2018年11月に国土安全保障省の下にCISAを設置、今回の選挙ではCISAが公開書簡で健全性を保証したとおり、海外からのサイバー攻撃や選挙の各種不正行為をほぼ完璧に阻止した。だが、偽情報や根拠のない不正疑惑がSNSで拡散し、分断と対立が深刻化するアメリカ内世論の半数がトランプの主張を支えているのも事実である。

情報戦には、サイバー攻撃による社会システムの破壊や大規模なイベントの妨害等によって政治目的を達成する方法と、情報操作や偽情報の拡散によって世論の対立や不信の芽をまき、中長期的に社会を不安定化させる方法がある(『誘導工作』、飯塚恵子)。社会のデジタル化が周回遅れの日本は、まず前者のサイバー攻撃対処にCISAの成功例を活用したほうがいいだろう。

成功要因の第1は、長年の懸案であった省庁の縦割り体制が、実効性のある政府全体の対応(whole-of-government)となったことである。オバマ政権は2015年6月のアメリカ連邦人事管理局ハッキング事件を受け「サイバーセキュリティ国家行動計画」を策定したが、2016年大統領選挙への攻撃を防止できなかった。

トランプ大統領はサイバー対策強化を優先課題にすると就任前に明言し、2017年5月に大統領令を発出、その中で連邦政府のネットワーク、重要インフラおよび国家・国民のそれぞれに関する直接的なサイバーセキュリティリスクの管理責任を各連邦政府機関の長に賦課した。その結果、CISAが司令塔となり、連邦政府内の情報機関(FBI等)、重要インフラ所管省庁および国防省(サイバー軍)等の横断的な、さらには州政府、民間セクター等との縦断的な役割と責任が明確になった。

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