日本が米大統領選のサイバー攻撃対策に学ぶ事 民主主義への外なる敵と内なる脅威に備えよ

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同時にクレブス長官は民間との会合に頻繁に参加、自らCISAの年次会合を立ち上げ、官民共同の強力な推進力となった。クレブス長官は2020年大統領選挙に備え何百ものシナリオを想定し、州政府や投票システム納入企業とも対応を徹底、公正な選挙の実現という任務をほぼ完璧に遂行した。長官にとって最大の脅威は、皮肉にもその任務を付与した大統領自身であった。

以上の分析から日本のサイバーセキュリティ体制構築に生かせる教訓は多い。現在の日本の司令塔は内閣サイバーセキュリティセンター(NISC、2015年1月設置)であり、NISCの組織編成はCISAに似た機能別編制となっている。だが、NISCは「重要インフラの情報セキュリティ対策は一義的には当該重要インフラ事業者等が自らの責任において実施する」ものであり、「政府機関は事業者等の情報セキュリティ対策に対して必要な支援を行う」ことを重要インフラ防護の基本的考え方としている。

この考え方に基づき、重要インフラ事業者等に対して活動目標の主体的策定や自主的な対応と相互協力を要望、また、経営層には自らの責任としての対策や情報開示等への取り組みと必要な予算・人材等の確保・配分を求めている。これでは動かない。

重要インフラ防護は国の責任であることを明確にせよ

まずはこの基本的考え方を改め、重要インフラ防護は国の責任であることを明確にし、関係省庁・自衛隊および事業者等との役割分担、任務に必要な運用体制と資源投入等を見直し、外からの攻撃に対する政府全体の体制整備を急ぐ必要がある。来年(2021年)には東京五輪と衆議院選挙が控えている。法案審議を通じた合意形成が必要であり、推進力となるキーパーソンの登場が望まれる。

さて、後者の世論誘導による社会の不安定化についてだが、残念ながらアメリカにもほかの民主国家にも特効薬はないのが現実だ。言論の自由を尊重する民主社会では、ネット上で偽情報のタネを一度まけばそれが瞬時に拡散し、発信源が不明なままエコーチャンバー効果で世論を形成できる。中国やロシアはアメリカ社会の格差等の活断層を狙って偽情報を流布し、後はアメリカ国民がそれを増幅し政治家が世論に迎合して自滅するのを待つだけという、勝つ必要のない戦いを仕掛けている。アメリカ社会の不安定化によって政権に国内政策優先・外交安保劣後を強い、自国に有利な国際環境を作る戦略である。

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