座間事件が映す「若年層の死因1位が自殺」の闇

20年以上改善されていない日本の大問題

こうして振り返ると、その猟奇性ばかりに視点がいきがちな事件だが、その前にまず着目すべきことがある。この事件の背景に隠された日本の事情だ。そこを見落とすべきではない。

なぜ、こんなに若い人たちが「死にたい」とつぶやき、白石被告と結びついたのか。実は、日本という国は、20代から30代の死因の第1位が「自殺」なのだ。それがもう20年以上も続いている。

判決までに77日間の審理期間が予定されていた、この座間の事件の裁判員裁判がはじまった9月、厚生労働省は昨年2019年の「人口動態統計」を公表している。

そこにある5歳ごとの年齢階級別に表示される死因の順位を見ると、15歳から39歳までの死因の第1位がいずれも「自殺」だった。2人に1人がなるとされる「がん」よりも多い。しかも、10歳から14歳まででは、「自殺」が死因の第2位を占め、2017年には同年齢階級の第1位になっている。

さらに、40歳から49歳までの死因の第1位は「がん」だが、第2位は「自殺」となる。50歳から54歳まででは「自殺」が第3位、55歳から59歳までで第4位、60歳から64歳までで第5位だ。

国内の日本人の自殺者数は、3万2000人を超えた2003年をピークに、年々減少傾向にある。ところが、20代、30代の死因の第1位が「自殺」である傾向は、もう20年以上変わらないで推移している。こんなに若者が自ら死を選ぶ国は、先進国といわれるなかでも日本だけだ。

欧米各国の死因1位は「事故」

政府は10月27日の閣議で2020年版『自殺対策白書』を決定している。その中でも、15歳から39歳までの死因の第1位が自殺であることを確認すると、「先進国の年齢階級別死亡者数及び死亡率(15~34歳、死因の上位3位)」とする図表を提示している。

それによると、2013年から2015年までの各国の統計で、日本は自殺が死因の第1位だが、フランス、ドイツ、カナダ、アメリカ、イギリスは、いずれも自殺が第2位で、イタリアは第3位となっている。各国とも第1位は「事故」だった。

人口10万に当たりの死亡者を示す自殺の「死亡率」を見ても、日本は16.3だが、フランス7.9、ドイツ7.5、カナダ10.6、アメリカ14.1、イギリス7.4、イタリア4.1となっている。やはり日本が高いことがわかる。ちなみに、韓国は同年齢階級の死因の第1位が自殺で、死亡率は日本と同じ16.3となっている。

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