茨城一家殺傷事件は「第2の酒鬼薔薇事件」なのか 「人を殺してみたい」衝動を押さえられない?

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送検のため茨城県警境署を出る岡庭由征容疑者(写真:共同通信)
2019年9月に起こった茨城県境町で一家4人が殺傷された事件で、茨城県警は5月7日、埼玉県三郷市に住む岡庭由征(おかにわ・よしゆき)容疑者を逮捕した。容疑者と被害者の接点は確認されておらず、動機は判明していない。ただ容疑者の行動をつぶさに見ていくと、過去の凶悪事件との共通点が浮かび上がってきた。作家・ジャーナリストである青沼陽一郎氏のリポートを前編と後編の2回にわたってお届けする。

うっそうと茂る雑木林の中に隠れたように建つ茨城県境町の一軒家。その周辺は畑が広がり、近隣の住宅からも数百メートルは離れている。ここに暮らす小林光則さん(当時48)と妻の美和さん(当時50)が殺害されたのは、2年前の2019年9月23日のことだった。

深夜0時過ぎ、2階で就寝中を鋭利な刃物で襲われたと見られる。当時中学1年生の長男(14)は両足と腕を切られて重傷。同じ部屋にいた当時小学6年生の次女(13)も催涙スプレーのようなものをかけられて負傷している。

この事件で今年5月7日に逮捕されたのは、事件現場から直線距離で約30キロ離れた埼玉県三郷市に住む無職の岡庭由征容疑者(26)だった。被害者家族と岡庭容疑者の接点は確認されていない。

なぜ、殺害におよんだのか。被害者側からすると、理不尽極まりない事件だが、加害者側から見たときには、岡庭容疑者の人物像と重なる事件はいくつもある。

16歳のときに殺人未遂罪など13の罪で起訴

岡庭容疑者は、高校2年生の16歳だったちょうど10年前に「連続通り魔事件」を起こしている。2011年11月18日、三郷市の路上で中学3年生の女子生徒のあごを包丁で突き刺して怪我を負わせ、2週間後の12月1日には隣接する松戸市の路上で小学2年生の女児の脇腹など数カ所を刺して重傷を負わせている。岡庭容疑者はこのときに、こう供述していた。

「人を殺してみたかった」

それ以前から身近にいる小動物の虐待を繰り返し、高校にネコの生首を持ち込んで騒ぎになったこともあった。それだけではなく、三郷市内の自動車やバイクに放火を繰り返していた。岡庭容疑者は、通り魔事件で逮捕されると、家裁から検察に逆送され、2件の殺人未遂罪のほかに、放火やネコ2匹を殺したという動物愛護法違反などを合わせて、13の罪で起訴されている。

それですぐに思い浮かぶのが、神戸連続児童殺傷事件、俗にいう「酒鬼薔薇事件」だ。

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