突然、夫が「性犯罪で逮捕」された妻たちの絶望 「加害者家族」の知られざる葛藤
気がつかなかった夫の裏切り
仁美(仮名・30代)は、いつものように慌ただしい朝を迎えていた。小学生のふたりの子どもたちを学校に送り出すと、自宅の前に車が止まっていることに気が付いた。すると、中からふたりの男性が現れた。
「警察です。ご主人はいらっしゃいますか?」
仁美は、慌てて身支度を整えている夫を呼びに行くと、特別驚いた様子もなく、
「ああ、ちょっと仕事でトラブルがあって……。夕飯までには戻るから」
そう言うなり、夫は鞄さえ持たずに止まっている車に乗り込んでいった。これが、仁美が夫を見た最後の姿になった。
「強制わいせつ3件、住居侵入も……。まだ、余罪はあるとみています。常習犯ですね」
翌日、夫が逮捕されたという連絡を受け、仁美は警察署にいた。夫は早朝や夜間に、1人で歩いている女性の後をつけ、抱き着いたり、身体を触って逃げるといった痴漢行為を繰り返していたのだった。
まさか、あの人が……。伝えられる事実のすべてが、仁美には想像もできないことだった。
「セックスレスでしたか?」
男性の警察官から唐突に立ち入った質問をされ、仁美は恥ずかしさで顔を上げることができなかった。
「子どもが生まれてからはずっと、夫婦生活はありませんでした」
仁美と夫は職場で知り合い結婚。仁美は結婚を機に退職し、2人の子どもが生まれた。夫は穏やかで真面目な性格。交際していたころから浮気の心配などしたことがなかった。夫婦生活が途絶えていたからといって、仲が悪かったわけではない。
子どもが生まれ、自然と求め合うことがなくなっていた。平凡だが幸せな日々を送ってきたはずなのに、夫はなぜ破廉恥な行為に手を染めてしまったのか……。