紀州のドン・ファン裁判が「超難航しそう」な訳

和歌山カレー事件と共通する「状況証拠で逮捕」

野崎幸助氏(右)と元妻の須藤早貴容疑者=2017年12月(写真:吉田隆/共同通信イメージズ)

“紀州のドン・ファン”と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家で会社社長の野崎幸助氏(当時77)が、2018年5月に自宅で不審死した事件で、和歌山県警は東京都品川区に住む元妻の須藤早貴容疑者(25)を殺人と覚醒剤取締法違反の疑いで4月28日に逮捕した。

野崎氏は、2016年に出版した自伝で、スペインの伝説上の好色放蕩な男「ドン・ファン」を自称し、“美女4000人に30億円を貢いだ男”として世間の注目を集めた。その“紀州のドン・ファン”が2018年2月に55歳も年の離れた須藤容疑者と結婚。そのわずか3カ月後の5月24日に不審死を遂げる。

当日は、田辺市の自宅で家政婦が鍋料理を用意した後に外出。夫婦がふたりで夕食をとった後、午後10時半ごろ、2階の寝室のソファに仰向けに倒れているのが見つかり、須藤容疑者が119番通報。その場で死亡が確認された。

解剖の結果、胃の内容物などから致死量を超える覚醒剤成分が検出。死因は急性覚醒剤中毒、死亡推定時刻は午後9時ごろとされた。遺体に注射の痕はなく、覚醒剤成分が長く残留する毛髪の検査で異常がなかったことから、県警は覚醒剤を口から飲ませられたと判断。防犯カメラの映像などから、何者かが侵入した形跡もなく、夕食以降に家にいたのは紀州のドン・ファンと若い新妻の2人だけだった。

脳裏に浮かんだ「和歌山毒物カレー事件」

あれから3年経っての突然の逮捕劇。須藤容疑者は任意の聴取で一貫して関与を否定していたが、県警が須藤容疑者のスマートフォンを解析するなどしたところ、事件前にインターネットで覚醒剤について検索していたこと、SNSで連絡を取った密売人と田辺市内で会ったとみられることが判明。事件当日、2人きりのときに入手した覚醒剤を飲ませたとみて、逮捕に踏み切ったとされる。

だが、この逮捕は裏を返せば、状況証拠の積み重ねによるものでしかない。飲ませたという目撃証言もなければ、今のところ自供もなく、動機もわかっていない。容疑者と犯行を裏付ける直接証拠は何もない。

そこに浮かぶある事件との不思議な共通点。和歌山、毒殺、状況証拠、女性……とくれば、すぐに私の脳裏をよぎった。

和歌山毒物カレー事件――。和歌山地方裁判所で傍聴した、表情も変えずに裁判に臨む林真須美死刑囚の姿を、今でも覚えている。

次ページ和歌山毒物カレー事件の経緯
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • CSR企業総覧
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
無神経すぎる人に「ちょっとだけ言い返す」技術
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
人材戦略から儲けのからくり<br>まで コンサル全解明

人材の争奪戦が過熱し、年収水準もうなぎ登りに。デジタル化を背景にコンサルティング業界は空前の活況を呈しています。本特集ではコンサル業界の動向やビジネスモデルを徹底解説。コンサル会社を賢く選び、上手に活用していくノウハウを紹介します。

東洋経済education×ICT