世界も注目。日本の新星ファッションブランド アンリアレイジ、世界への挑戦(前編)

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――そのときは、洋服で食べて行くということに、抵抗はなかったのですか? 早稲田大学を出て、会社員で生きて行くという選択肢も、この時点ではまだ残していたのでしょうか。

まだ残されていました(笑)。その後、僕は、ファッションショーをしたくて、大学内でやったり、いろいろなクラブやライブハウスとかを借りて、ショーをしていました。その写真とファッションショーのビデオを通信販売のカタログにして、郵送でいろんな人に配ったりしていたのが、意外とビジネスというか、おカネになって。

――そうなんですね。

当時、自分の中では、1着売れて1万円でも高いというイメージだったのです。自分がアルバイトして1万円稼ぐのと、今日1日縫って、これが1万円に替わるのだったら、ずっと自分の洋服を作って、毎日1日1着でも売れるようなものにできたらいいな、と思っていました。それに、けっこう注文もたくさんたまっているような状態でした。

僕が大学3年生頃には、もうアンリアレイジの前身となるような構成で、この組織ができていて、後輩とか、ファンもすごく増えていました。

――では、もう、そこからは迷わずに?

そうですね、大学卒業が近づくにつれ、「どうするか?」となったときに、今一緒にやっているプレスのIさんと、もうひとり、中学からの友人Mくんと僕の3人で、おカネ出しあって起業して、25歳くらいまでは、やりたいようにやってみようかって。

――頑張って2~3年はやってみよう、というところから始まったのですね。

そうです。それがこうなりました。

――10年で、ここまでの成長はすごいですよね。現在のビジネスは、国内で3店舗(路面1+ショップインショップ2)、卸取引約30件と、海外卸も約10件。受賞歴もたくさんありますし、海外からの評価もすごく高いです。

いや、ここまでの道のりは長いほうだと思いますね。誰かに任せず、全て自分たちの手で、分からないことを一つ一つ勉強しながら築いてきたので、時間はかかりました。始めるのが早かったので、まだ30代前半で、いろいろなことをやっていると思われますけど。普通にブランドを始めて、だいたい4年目とか5年目でこれくらいになると思うので、普通の人の倍くらいかかっています。

   

神田氏からもらった、日の丸Tシャツがかかるオフィスにて
 
アンリアレイジ デザイナー 森永 邦彦
1980年東京都生まれ。早稲田大学、バンタンデザイン研究所卒業。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト「GEN ART 2005」でアバンギャルド大賞を受賞。 2006年春夏より東京コレクションに参加。2011年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。2012年、個展「アンリアレイジ展 A REAL UN REAL AGE」(パルコミュージアム・東京)を開催。 2013年、「フィロソフィカル・ファッション2 : A COLOR UN COLOR」(金沢21世紀美術館・石川)を開催。

 

さて、次回は、アンリアレイジのアイデアの実現の仕方や失敗談、さらに森永さんの仕事哲学にも迫ります。

※ 後編は、6/11(水)に掲載します。

 

〈こぼれ話:アンリアレイジのブランド名〉
森永氏:「日常と非日常」というのがテーマです。でも、日常を作りたいので、(ブランドの頭文字は)Aにしています。“A REAL”な。Uの方の“UNREAL”だとよく思われるのですが、“非日常的な”、“アート的な”、着ることができない洋服を作るのではなくて、A REALな日常の洋服をずっと目指している。というところから、最初は、Aにあえて変えています。
ナオヨ マディソン ファッション ジャーナリスト

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ナオヨ マディソン / Naoyo Madison

青山学院大学 国際政治経済学部卒業。大手総合商社に入社し、配属先の繊維本部で欧州系インポートブランドを担当。その後、パリ ソルボンヌ大学に留学する為に渡仏。帰国後は、ラグジュアリーブランドを扱うセレクトショップでアシスタントバイヤーとして勤務した後、イタリア系ブランドのジャパン社に転職。数社にてキャリアをつみ、MDバイヤーとして活躍。現在は、ジャーナリストとしてロンドンやパリをはじめとする国内外のファッションショーをまわり、ランウェイレポートやインタビュー、ファッションビジネスを中心とした記事を執筆する。

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