小難しい「科学の話」を面白く伝えるための方法

一般の人と「同じ目線」に立つことが大切だ

伊与原:僕も西之島には興味があって、川上さんが出演されていたNHKの番組(「NHKスペシャル 新島誕生 西之島〜大地創成の謎に迫る〜」など)も拝見しました。

川上:番組をご覧になったのですね。ありがとうございます。噴火という大きなイベントは、通常一度しか調査できません。しかし、西之島の場合、2013年から2015年の噴火でできた新たな大地において生物相の変化が記録できたうえに、その後2020年の新たな噴火で全域が溶岩と火山灰に覆われてもう一度リセットされました。

おかげでこれからもう一度変化を調査し、データを取得できるという幸運に恵まれました。研究においては「繰り返し」は非常に大事です。1例で報告するのと、2例でするのとでは、重要性が違ってきますからね。理系の人でないと、なかなかこの感覚はわかっていただけないものがありますが。

伊与原:よくわかります。地質学の場合、過去にさかのぼって「何が起きたのか」を見ることができない、というジレンマとつねに闘っていますからね。

川上:西之島では何が起きているのかをリアルタイムで調査できます。

伊与原:僕にとっても、西之島は「自分が生きているうちにあんな大きな島の出現に遭遇するなんてラッキー」と喜ぶくらい、大きな出来事でした。去年(2019年)からまた噴火が活発化していますよね。

目撃できるのは西之島の始まりにすぎない

川上:火山の専門家が「もう噴火しないよ」と言うので、僕らは調査に行ったのですが、そのあとでまた噴火しました。

伊与原:想定外というか、常識を覆すような活動を続けているようですからね。島にアクセスできない以上、十分な観測体制も敷けないでしょうし。

川上:73年の噴火から2013年の噴火まで40年間に新たに定着した植物が3種確認されていました。73年噴火以前から3種の植物があったので、合計6種類になったところで、また噴火で溶岩をかぶってしまったわけです。

僕の研究者人生の残りの時間で、あと何種植物が入るのを見られるかと予想すると、せいぜい2、3種くらいでしょうか。そのくらいの種類しか植物がないと、昆虫や他の捕食者も入りにくい。そう考えると、僕が目撃できるのは、あくまで「西之島のはじまり」の部分にすぎないと思いますね。

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