小難しい「科学の話」を面白く伝えるための方法

一般の人と「同じ目線」に立つことが大切だ

伊与原:地質学の場合、岩石さえ採取できれば、ある程度研究が進むのですが、生態学ではもっと長期にわたって現地の観察を続けることが大切なのではないですか。

川上:島という場所では、生き物は1カ所でずっと安定して生息しているとは限らず、「絶滅」と「移入」を繰り返すので、その時に記録していないと、どの種が最初に入ってきたのかなど、過去の履歴がわからなくなることも多いです。

溶岩だと、新しいものが上に古いものが下にと、層が積み重なっていくと思うのですが、生物の場合はそうはいきませんからね。

伊与原:噴火後の西之島に鳥が戻ってきていたことはテレビ番組でも紹介されていましたが、繁殖はどうだったのでしょう?

川上:溶岩だと、ごつごつして鳥は繁殖しにくいです。ところが、火山噴火でごつごつだった溶岩が、わずか半年ほどで真っ平らになった場所がありました。そこで、1年後くらいに鳥がたくさん繁殖し始めました。

生態学と地質学の違い

伊与原:どうして平らになったのでしょうか。

川上:地質学の研究者に聞くと、おそらく波の作用で平らになったのだろうということでした。

平らになった場所で鳥が繁殖すると、そこに巣材や排泄物などの形で有機物が持ち込まれます。さらに鳥がいずれ死ぬとその遺体を食物にする昆虫がやってくる。そうすると砂のなかに有機物が入って、ササラダニなどの土壌動物も生息できるようになります。

溶岩、波という生物がかかわらないところに生態系の出発点があるということを西之島では目の当たりにできて、本当に面白いです。ひとつの島というコンパクトな範囲で、さまざまな変化が起きています。でも、こういう半年間の変化というのは、地質学の方からすると、「どうでもいい」ことでしょう。

伊与原:確かに、地球科学の研究者は、1万年前でも「最近」と言っちゃいますからね(笑)。ちなみに、僕が大学院生時代に主に研究していたのは27億年前の地磁気です。

川上:27億年前(笑)!

伊与原:『八月の銀の雪』の表題作で、地球のコアの中に内核が生まれたのは何億年も前のことだと書きました。僕が大学院生の頃は、それが27億年前あたりではないかと考えられていたんです。

内核ができると外核中の対流が安定して地磁気が強くなるという説がありましてね。強い磁場は、有害な宇宙線のバリアになってくれるんです。すると、それまで深海でひっそり生きていた原始の生命が浅い海に進出できるようになる。そのなかに光合成をする微生物が現れて、地表に酸素を供給するようになった。

こういう筋書きを検証するために、アフリカやオーストラリアまで太古の岩石を採りにいっていました。ですから、まさに「地球と生命の共進化」を研究していたわけです。

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