セミの最期は澄んだ空を見ることさえできない 土の中に何年も潜り、一夏で子孫を残す

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そろそろセミの大合唱も静かになるタイミングです(写真:gyro/iStock)
生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』から、セミの章を抜粋して掲載する。

死を待つセミは何を見る

セミの死体が、道路に落ちている。

セミは必ず上を向いて死ぬ。昆虫は硬直すると脚が縮まり関節が曲がる。そのため、地面に体を支えていることができなくなり、ひっくり返ってしまうのだ。

死んだかと思ってつついてみると、いきなり翅(はね)をばたつかせてみたりする。最後の力を振り絞ってか「ジジジ……」と体を震わせて短く鳴くものもいる。

別に死んだふりをしているわけではない。彼らは、もはや起き上がる力さえ残っていない。

死期が近いのである。

仰向けになりながら、死を待つセミ。彼らはいったい、何を思うのだろうか。

彼らの目に映るものは何だろう。

澄み切った空だろうか。夏の終わりの入道雲だろうか。それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。

ただ、仰向けとは言っても、セミの目は体の背中側についているから、空を見ているわけではない。昆虫の目は小さな目が集まってできた複眼で広い範囲を見渡すことができるが、仰向けになれば彼らの視野の多くは地面のほうを向くことになる。

もっとも、彼らにとっては、その地面こそが幼少期を過ごした懐かしい場所でもある。

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