セミの最期は澄んだ空を見ることさえできない 土の中に何年も潜り、一夏で子孫を残す
「セミの命は短い」とよくいわれる。
セミは身近な昆虫であるが、その生態は明らかにされていない。セミは、成虫になってからは1週間程度の命といわれているが、最近の研究では数週間から1カ月程度生きるのではないかともいう。
とはいえ、ひと夏だけの短い命である。
しかし、短い命といわれるのは成虫になった後の話である。セミは成虫になるまでの期間は土の中で何年も過ごす。
昆虫は一般的に短命である。昆虫の仲間の多くは寿命が短く、1年間に何度も発生して短い世代を繰り返す。寿命が長いものでも、卵から孵化(ふか)して幼虫になってから、成虫となり寿命を終えるまで1年に満たないものが、ほとんどである。
その昆虫の中では、セミは何年も生きる。実に長生きな生き物なのである。
幼虫の期間が長い理由
一般に、セミの幼虫は土の中で7年過ごすといわれている。そうだとすれば、幼稚園児がセミを捕まえたとしたら、セミのほうが子どもよりも年上ということになる。
ただし、セミが何年間土の中で過ごすのかは、実際のところはよくわかっていない。何しろ土の中の実際の様子を観察することは容易ではないし、仮に7年間を過ごすとすれば、生まれた子どもが小学生になるくらいの年数観察し続けなければならない。そのため、簡単に研究はできないのだ。土の中での生態については、いまだ謎が多いのである。
それにしても、多くの昆虫が短命であるのに、どうしてセミは何年間も成虫になることなく、土の中で過ごすのだろう。
セミの幼虫の期間が長いのには、理由がある。
植物の中には、根で吸い上げた水を植物体全体に運ぶ導管(どうかん)と、葉で作られた栄養分を植物体全体に運ぶ篩管(しかん)とがある。
セミの幼虫は、このうちの導管から汁を吸っている。導管の中は根で吸った水に含まれるわずかな栄養分しかないので、成長するのに時間がかかるのである。
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