世界と逆行する日本の「オンライン診療政策」 「初診かかりつけ医」縛りがコロナ難民を生む

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新型コロナ第3波到来を前に、オンライン診療に「かかりつけ医」の制限が課せられるという(写真:USSIE/PIXTA)

「患者が普段からかかっている『かかりつけ医』が診療する場合にオンライン診療の初診を解禁する」――10月30日、田村憲久厚生労働相が閣議後の記者会見で表明した。一部報道によれば、河野太郎規制改革相と平井卓也デジタル改革相との3閣僚の間で合意したという。

愕然とした。新型コロナ第3波到来を前に、今こそ診療態勢の拡充を図るべきことは自明だ。とはいえ、一朝一夕に診療所を増やしたり医療人材を配置したりできるわけではないし、そもそもむやみに増やせばいいものでもない。合理的かつ有効な解決策は、オンライン診療の普及だ。それなのに、「かかりつけ医」の制限が課せられるという。“解禁”などという言葉を使っているが、骨抜きにされたも同然だ。

このままでは何が起きるだろうか。ナビタスクリニックの緊急事態宣言前後の状況も踏まえながら、“かかりつけ医”縛りの問題を考えてみたい。

緊急事態宣言中、オンライン診療が激増

ナビタスクリニックは、新宿駅、立川駅、川崎駅という3つの主要ターミナル駅のエキナカに立地している。2012年の開業時からのコンセプトは、「コンビニクリニック」。平日は夜9時まで、土日や祝日も診察を行ってきた。このコンセプトは多くの人に支持をいただき、3院とも通勤・通学途中に立ち寄る利用者が絶えることはなかった。

しかし、異変は2020年4月頃から徐々に目に見え始めた。いわゆる受診控えだ。医療機関を受診したら、そこで新型コロナをもらってきてしまうのではないか……。そんな不安が広がり、人々の足が医療機関から遠のいた。一部報道では、5月の全国の医療機関への受診者数は前年同月より約2割減少し、小児科ではほぼ半減したという。ナビタスクリニックも例外ではなかった。

そこへ入れ違いに起きたもう1つの“異変”が、オンライン診療利用者の急増だった。

ナビタスクリニック新宿院・立川院では2018年に、川崎院では今年4月にオンライン診療を導入しているが、今年3月までは、コンスタントに利用者がいたとはいえ、月に数十件(50件未満)レベルだった。それが4、5月に一気に10倍以上に増え、それぞれの月で300件を超えている。

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