世界と逆行する日本の「オンライン診療政策」

「初診かかりつけ医」縛りがコロナ難民を生む

そして軍配は日医に上がった。着地点は冒頭のとおりだ。

理由は、「受診歴がないなど患者の状態をあらかじめ把握できていないと誤診につながる」ためだという。だが、医療機関に普段から足しげく通っているのは、それこそ高齢者か、それなりの持病を持っている人に限られる。持病や体質は、問診で丁寧に確認できるし、そもそも“初診”であれば、過去の診察内容がどれだけ参考になるかは怪しいものだ。

何より「かかりつけ医」縛り自体、大きな問題がある。日本医師会総合政策研究機構の調査(20歳以上の男女1212人を対象)によれば、「かかりつけ医」を持っている人は、全体でも半数(55.2%)にとどまる。しかも年齢別に見ると、40~50代だと45%前後、30代で35%弱と、若い年代ほど割合が低下し、20代に至ってはようやく20%台に乗る程度だ。

また、日本医師会が4~5月に実施した医療機関対象の調査では、回答した165医療機関中、オンライン診療を実施していたのはわずか7院(4.2%)だった(うち3院は今回の新型コロナ流行をきっかけに導入、その後増えている可能性はある)。

かかりつけ医を持つ人が一部に限られ、さらにそのかかりつけ医がオンライン診療に対応していなければ、初診からのオンライン診療など幻想も同然だ。

世界は推進に向け制限を撤廃している

オンライン診療は今、世界中で急速に普及している。当然、新型コロナに対応するためだ。

アメリカ・マッキンゼー社の調査によれば、アメリカ国内では新型コロナウイルスの蔓延によってオンライン診療の利用が大幅に加速。2019年に11%だった一般利用率は、今年4月27日時点で46%にまで急拡大した。現在のアメリカ医療費のうち最大2500億ドルがオンラインに置き換わる可能性も示されている。

急速な普及の背景には、規制当局による制限の大幅な緩和がある。また、アメリカ政府の保険プログラムであるメディケイドとメディケアは、対象となるサービスの種類を拡大、オンライン診療への支払い率を高く改定した。

もともとアメリカのオンライン診療は、緊急医療分野に注力しており、必要時に直ちに医師の診察を受けられることが重視されていたという。そのため、通常かかりつけ医ではなく当直医が診察を行う。もちろん初診・再診の区別などない。

中国は、新型コロナ発生前に、すでにオンライン診療の普及に向けて大きく舵を切っていた。「China Briefing」(7月31日付)によれば、中国国家医療保障局(NHSA)は昨年、電子医療保険システムを立ち上げ、オンライン診療に導入。同8月には、WeChat(チャットアプリ)とアリペイ(決済アプリ)を使ったオンライン診療が始まった。

年末に新型コロナが発生すると、国家衛生健康委員会(NHC)は、人口移動を最小限に抑え、感染のリスクを減らすために、オンライン診療の利用を奨励した。新型コロナ中国最大の医療プラットフォームであるPing An Good Doctorでは、昨年12月から今年1月のわずか2カ月間に、新規ユーザーが900%増加し、オンライン医療相談が800%増加した。なお、初診への制限や、かかりつけ医優先といった資料は一切見当たらなかった。

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