世界と逆行する日本の「オンライン診療政策」 「初診かかりつけ医」縛りがコロナ難民を生む
おそらく、きっかけは大きく2つ。1つは、4月7日に発令された緊急事態宣言。もう1つが、厚労省が同10日、初診からのオンライン診療を「時限的・特例的」に解禁したことだ。
以前は、保険適用の範囲が狭く、しかも初診では利用できないなど、制度として利用者フレンドリーな状況ではなかった。そのため、多くはアフターピル(緊急避妊薬)を求めたものだった。
今年4月の診療報酬改定でもそうした制限は大きく緩和されなかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚労省が同月10日、初診からのオンライン診療を「時限的・特例的」に解禁。風邪や新型コロナについても、オンラインでの保険診療が当分認められることとなった。
それからのオンライン診療利用者数の伸びは、前述のとおりだ。実はアフターピルのオンライン診療数はこの間とくに伸びておらず、保険診療による初診・再診が圧倒的だ。
恐怖で受診控え、62.0%がオンライン継続を希望
その後、5月25日に緊急事態宣言が解除され、外出や対面診療への抵抗が薄れてくると、反比例するようにオンライン診療は減少していった。しかし冬はすぐそこまで来ている。風邪やインフルエンザ、それこそ新型コロナ患者が増えれば、オンライン診療の需要は再び高まるだろう。
実際、今年4月末に実施された三菱総合研究所と医療情報システム開発センターの共同調査(一般の男女2578人が回答)では、通院していた1043人中、22%の人が新型コロナ感染拡大により通院を延期・中断。その理由として「コロナ感染が怖いから」を挙げた人が62%に上っている。
さらに全回答者のうち、今後、体調不良で医療機関を受診する際に、「状況(緊急事態宣言下の外出自粛等)によって対面診療もしくはオンライン診療を選択したい」が39.7%、「状況にかかわらず、軽い症状であればオンライン診療を選択したい」が23.5%となった。合わせて63.2%が、オンライン診療を選択肢として希望していることになる。
ところがそこへ、今回の「かかりつけ医」縛りである。
兆しは、2カ月近く前からすでにあった。9月17日に田村厚労相が初診からのオンライン診療を恒久化する方針を表明した直後、日本医師会が難色を示したのである。同24日には、中川俊男会長が記者会見で、慎重に検討を進めるべき、とした。
政府と日本医師会の攻防は続き、10月8日には、くだんの3閣僚で「初診を含め原則解禁」で合意。これに対し、「医療の質低下につながりかねないため、容認できない」と主張する日医・中川会長は、かかりつけ医によるオンライン健康相談を同日の記者会見で提案した。さらに同会長は10月14日、「かかりつけ医を基軸として考えるべきだ」と明言した。
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