世界と逆行する日本の「オンライン診療政策」 「初診かかりつけ医」縛りがコロナ難民を生む

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オーストラリアでも、3月13日から国民保険でのオンライン診療が可能となった。医療機関での医療者・患者の新型コロナ感染を防ぎながら、患者のケアを可能にし、さらに医療用のマスクや手袋などの不足を回避するためだという。

実体のない診療ビジネスへの対策としては、オンライン診療から1年以内の受診が保険適用の要件とされ、問診で必要があれば対面診療を行える態勢が要求されている。一方で、やはり初診への制限は見当たらない。

こうしてみると、日本の今回の方針は、「できるだけ制限を撤廃してオンライン診療を浸透させよう」という世界の潮流に、明らかに逆行している。本来、「初診はかかりつけ医でなきゃ」などと悠長に構えている場合ではないはずだ。

「第3波」がすぐそこまで来ている

私がオンライン診療のあり方についてこれだけ気をもむのは、言うまでもない。新型コロナ第3波がすぐそこまで来ているからだ。

国内の新型コロナ新規感染者数は、このところ着実に増加傾向を示している。8月の第2波は9月にいったん落ち着きを見せたが、それでも1日当たり400~800人弱で推移してきた(厚労省による)。さらに11月5~6日は連日、1日当たり1000人を超えた。8月21日以来だという。

寒く乾燥する冬は、もとより風邪の流行する季節だ。一般的な風邪の10~15%は、4種類のコロナウイルスによる。11月に入って急激に気温・湿度の低下が進んだ。いつ新型コロナ第3波が本格的に到来してもおかしくない。

具体的には、4月に新規感染者数が1日200人を超え緊急事態宣言が発令された東京都は、最近も1日当たり100~200人レベルで推移しており、油断できない状況だ。宮城県や北海道など寒冷地では過去最高の感染者数を更新中と報じられ、第3波が始まっていると見る向きもある。

一方、海外との人の行き来の再開は加速しつつある。11月1日からは、国内在住の日本人・在留資格保持者が短期出張(隔離要請期間を除いて7日以内)から帰国・再入国する際、一定条件の下、帰国後14日間の待機が緩和された。

また、9カ国(韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国〔香港、マカオ含む〕、ブルネイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド)が、渡航制限レベル3「渡航は止めてください」からレベル2「不要不急の渡航は止めてください」に引き下げられた。これに伴い、入国拒否対象地域の指定も解除。帰国・入国の際、国籍にかかわらず検査が原則不要となった。

もちろん、国をまたいだ経済活動や人の往来は、少しずつ再開させていかねばならない。ただし、人の動きが活発化するほど、新型コロナウイルスが入り込むスキも、単純に増えていく。

ところがわが国は、PCR検査を誰でも手軽に受けられる状況にはない。ウイルス発生から1年が経とうとする今、技術的な問題でないことは明らかだ。無症状でも人にうつるのが新型コロナウイルスである。無症状者もいつでも気兼ねなく検査を受けられる体制でない限り、クラスターの早期発見・封じ込めなど不可能だ。このことは、第1波で既に「失敗」として経験済みのはずなのだが……。

流行の芽を摘むことができなければ、やはり第3波の到来は時間の問題だ。それを支える医療側の体制は準備万端と言えるだろうか? 医療崩壊を防ぎ、“コロナ難民”の続出を回避するには、今ある医療資源を最大限に生かすしかない。であれば、利用者を大幅に絞り込んでしまう「初診かかりつけ医」縛りなど、ナンセンスだ。

ぜひ現実的な見地から再検討を求めたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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