指導死?部活顧問に居場所奪われた高1の絶望 適切な指導だったのか、11月13日控訴審判決

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3月3日、悠太は部活のために登校したが、練習に参加せず、学校を出て、地下鉄の駅に行き自殺した。その直前、悠太は生徒Cにメールした。以下は、その一部だ。

悠太が最後に使っていた携帯電話(筆者撮影)

俺の何かしらのことを言ったんだよね??

それが何なのか俺ゎ分からないけどさ

(中略)

信じなきゃよかった

生まれなきゃよかった

(中略)

ぢぁあ何があってこんな状況になっているのか

先輩に報告した二人が嘘を言っているんぢゃない??

悠太は最後まで真実を知らず、人間不信のままだった。自殺した日、悠太と顧問は会っていないとされていた。しかし控訴審で証拠提出された匿名メールによると、悠太と顧問が職員室で会っていたという。

事実なら、自殺当日に悠太は顧問となんらかの話をした後、校舎を出て、自殺したことになる。そればかりではなく、この事実を学校が隠蔽したことになる。ただ、匿名情報に真実相当性の判断がされるかはわからない。

北海道側は和解のテーブルにつかず

生徒指導の指針として、文部科学省は「生徒指導提要」(2010年)をまとめている。そこには、複雑化・多様化する児童生徒の問題行動などを解決するためには、校内の複数の教職員や外部の専門家などを活用し、学校として組織的に対応することが重要、と書かれている。

2月は組織対応した。ところが、3月は顧問が単独で行い、そのことを生徒指導部長が知ったのは悠太の自殺後だ。

友人との連絡手段を絶たれ、悠太の孤立化を助長した「指導」は適切だったのか。暴力を伴わない不適切な指導について、遺族は「精神的体罰」と位置付ける。それによって精神的健康が悪化し、自殺の準備状態を作ったと主張する。

「相談相手を失い、部活以外に居場所がない悠太は、どんな思いで2月を過ごしたことでしょうか。3月の指導では、Cくんが裏切ったと思い、(顧問に立ち会わされた)上級生に「辞めてほしい」と言われたことで、部活という居場所を失い、味方がいないかのように思わされたのです。顧問はあえて、悠太を孤立させたのです」(遺族)

控訴審は2回目で裁判長が交代し、4回の弁論が開かれた。裁判所からの事務連絡を出し、双方に論点整理をさせた。結審後は和解協議の場を設けた。しかし道側が同じテーブルにつくことを拒否。和解不成立となった。

「悠太が指導を受けた時期は、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のキャプテンが自殺した件で、教師による暴行や暴言の問題について報道されていました。また、滋賀県大津市の中学生のいじめ自殺をきっかけにいじめ防止対策推進法の議論もされていたときでもあります。

にもかかわらず、学校は調査前から『いじめはなかった。指導は適切だった』と言っていました。その後アンケートを取ったものの、原本を破棄したのです。ちゃんと調査もしていないのに和解協議にも応じないのは、あまりにも行政としての責任を放棄しすぎではないでしょうか」(遺族)

道側は「指導は問題ない」とする主張を一審から変えていない。11月13日、札幌高裁はどういった判断を下すのだろう。

渋井 哲也 フリーライター

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しぶい てつや / Tetsuya Shibui

1969年栃木県生まれ。 1993年長野日報社入社。 1998年退社後、フリーに。 若者の生きづらさ、自殺、自傷行為、家出、援助交際、少年犯罪、いじめ、教育問題、ネットコミュニケーション、ネット犯罪などを取材。

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