「食えない中小企業診断士」が今後増加する理由 合格率10年で「2倍」、質の低下も予想される

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まず、当然予想されるのは、中小企業診断士の質の低下です。ちょっと勉強したら受かる楽勝資格なら、中小企業診断士の専門家としての能力が疑われます。補助金の申請書類のチェックといった単純な業務なら問題ありませんが、民間企業へのコンサルティングやリレーションシップ・バンキングなど高度な業務を担うのは不安です。

また、今年3月、5人の専門家が補助金2592万円を詐取した事件が明るみに出るなど、中小企業診断士による補助金がらみの不祥事が多発しています。中小企業診断士が増えると、モラル低下がいよいよ心配です。

さらに、私が個人的に懸念しているのが、地方での「食えない診断士」の増加です。コンサルティング業界では近年、事業承継を中心とした「補助金バブル」、今年は「コロナバブル」と言われるほど、地方で活動する中小企業診断士は公的支援の業務で潤っています(「コンサルばかり儲けさせる『国の補助金』の問題」参照)。そして、公的支援の業務を当てにして独立開業する地方の中小企業診断士が増えています。

しかし、長い目で見てどうでしょうか。日本の中小企業政策を痛烈に批判するデービッド・アトキンソン氏が、新設される政府の成長戦略会議の委員に就任します。菅義偉首相はアトキンソン氏を信奉していることから、来年以降、まずコロナ対策の公的支援が一段落し、その先、中小企業の延命を目的とした支援は大幅に縮小するでしょう。

中小企業庁が中小企業診断士を増やし、公的支援を当てにして中小企業診断士がここぞとばかりに独立開業し、数年も経たないうちにはしごを外される……。私の懸念が杞憂に終われば良いのですが。

企業や国民に与える影響

ところで、中小企業診断士の増加=質の低下は、コロナ対策以外でも、企業・国民に影響を及ぼします。

日本では国家資格の保有者というと、「高度な専門知識を有するその道のプロ」と信用されますが、世界では必ずしもそういう認識ではありません。アメリカなど多くの先進国で公的資格は、「その分野の基本知識を有することを証明する」に過ぎず、資格保有者が本当にプロとして高度な能力を持つかどうかは、利用者が個別に判断します。

日本では1990年代後半以降、多くの国家資格で制度改革=難易度の引き下げ=質の低下が進められ、弁護士や公認会計士など大幅に増えました(弁護士の場合、2000年が合格者数のピークで、その後は弁護士過剰が問題になり、減少しています)。この改革で、企業・国民が弁護士など専門家を利用しやすくなりました。中小企業診断士も、遅ればせながらこうした流れに向かって進むということです。

今後、専門家を利用する企業・国民の側には、意識改革が求められます。企業・国民は、国家資格保有者を「国が証明しているんだから間違いないでしょ」と盲目的に信じてはいけません。専門家はいよいよ玉石混淆になりますから、いい専門家とダメな専門家を見分ける姿勢と判断力が求められます。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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