「食えない中小企業診断士」が今後増加する理由 合格率10年で「2倍」、質の低下も予想される

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今、中小企業診断士が直面する「危険」とは?(写真:Graphs/PIXTA)

中小企業診断士といえば、各種ランキングで社会人の人気ナンバーワン資格。その中小企業診断士がいま大きく変わろうとしています。ひと言で言うと「難関資格から楽勝資格へ」という変化です。

今年8月に行われた今年の1次試験で、合格率(合格者数÷受験者数)が42.5%と例年を大きく上回りました。科目合格制を導入した平成18年(2006年)以降の合格率は、最低が平成22年(2010年)の15.9%、最高が令和元年(2019年)の30.2%。20%前後の年が多かったので、飛び抜けて高い水準です。

また、10月6日の経済財政諮問会議で新浪剛史議員(サントリー・ホールディングス社長)が次のような提言をしました。

「中小企業診断士は1次試験では7科目すべてに合格しないと試験に通過できないなど、たいへん難易度が高い。税理士のように、何科目か合格したら資格を与えるようにしてはどうか」

この提言や金融庁など中小企業診断士の増加を求める声を受けて、今後、試験の難易度を引き下げる制度改正が進められることになりそうです。今回は、中小企業診断士を巡る変化とその影響を考えてみましょう。

地方に足りない中小企業診断士

なぜいま中小企業診断士の難易度が引き下げられるのでしょうか。先の安倍政権は、中小企業の経営基盤を強化するため中小企業政策に力を入れ、ものづくり補助金・事業承継補助金など公的支援を充実させました。その結果、中小企業政策を現場でサポートする中小企業診断士のニーズが増えました。さらに今年は、新型コロナウイルスで苦境に立たされた中小企業を支援するため、各種公的支援のメニュー・予算額が激増しています。

現在、全国で約2万7千人が中小企業診断士に登録しています。ただその7割は、資格取得後も企業勤務を続ける“企業内診断士”で、ほとんど中小企業支援をしていません。また中小企業診断士の多くが大都市圏に居住しています。そのため地方では、中小企業診断士の不足で公的支援が滞るという事態が起こっています。

制度を所管する中小企業庁は、平成17年(2005年)以来、①中小企業診断士の総数の拡大、②中小企業診断士の質と信頼性の確保・向上、という方針を掲げてきました。

しかし、公的支援の現場での中小企業診断士の不足を受けて、「質より量」に方針転換し、量を確保するために意図的に試験の難易度を下げたのでしょう。なお1次試験だけでなく、2次試験と実務補習の部分を実施する登録養成課程をどんどん増やし、中小企業診断士の増加を促しています。

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