冗談ではなかった「テトラ型スピーカー」の正体 エレコム社員が楽しんで作ったらこうなった

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──最終的におよそ543万円を集め、目標達成率は1780%までになりました。思ったよりも、テトラポッドファンはいましたね。

石川:そうですね。そもそもどれくらい売れるのか事前にまるで予想できず、目標金額は30万円と弱気の設定をしていました。達成率が高いのはそのせいもあります。

テトラポッドはスピーカーには向いていない

──石川さんの現在の所属はヘルスケア&ペリフェラル課で、マウスや加湿器などを担当しているそうですね。本業のかたわらでスピーカーを開発したのですか?

石川:入社してすぐに所属したのがオーディオチームでした。そこでテトラポッドの企画が始まったのですが、1年で異動になりました。プロジェクトはメンバーを変更せずに進行することになったので、私は違う製品をやりながら、隙間時間を使って詰めていきました。

──テトラポッドスピーカーを作るにあたって、どんなところに苦労がありましたか?

石川:テトラポッドの形が完成されていて、いじろうとすればするほどいじれないことです。スピーカーなので、穴を開けたり、ゴムをつけたりする必要があります。足の付け根に細い穴をあけていますが、この穴にたどり着くまでに30案は考察しました。目立つ目立たない以前に、必要な面積を稼ぐことができなかったんです。

──そうですよね。スピーカーであるからには、つけなくてはならないものがいろいろありますよね。

石川:上部にも穴が空いていて、逆ピラミッド型の部品がついています。ここも最初はふさいでいて、地面に向かって音を出すようにしていました。でも、それでは音が死んでしまいます。それを解決するために穴をあけて、ツイーター(高音用スピーカー)を設置しました。音のこだわりと外観はすべてシンクロしています。

山目:テトラポッドはスピーカーにするのに適した形ではありません。テトラポッドとしての魅力を生かし切ったうえで、音のよさも両立させるということが、石川が苦労したポイントかなと一緒に見ていて思いました。

エレコムの山目悠貴さん(写真提供:エレコム)

──商品紹介で、山目さんは“TETORA LOVER”という肩書ですが、製品づくりにどう関わったのですか?

山目:私は元々、テトラポッドがすごく好きなんです。石川はスピーカーは本職ですが、テトラポッドはマニアというほどではありません。ですので、こうしたほうがより本物に近づくのではというようなアドバイスを適宜していました。

──山目さんありきで始まった企画なのですか?

山目:テトラポッド好きについては社内の誰も知らなかったと思います。風通しがいい社風なので、デスクの周りで「今何してる?」という会話は普段から盛んに行われています。ある日、石川のデスクの上にぽっとテトラポッドスピーカーのモックアップが置いてあったんです。「めっちゃおもろいもん作ってるじゃないですか」と話しかけて、そこから発展していきました。

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