もしかすると何か精神的な、または発達上の特性があったのでしょうか。でも、母親自身は自分のことをおかしいとは思っていないので、病院にかかることはありませんでした。
周太さんの記憶の中の母親は、いつも妹のことばかり褒めていました。勉強も運動もでき、発育が早かった妹を褒めそやしては、周太さんのことをおとしめるのです。
「僕の目の前で『〇ちゃん(妹の名)は成長が早いねえ』って何度も言うんです。成長が早い子こそ優秀であり、成長が遅い子は劣等生だ、というレッテルを貼る。僕も子どもだったから『ねえ、しゅうちゃんも早かったでしょ』と言うんだけど『あんたは遅いよ』のひと言。ずっと『(〇ちゃんに比べ)あんたはダメだ、あんたはダメだ』と言われてきました」
当時の周太さんは、自分に自信をもてず、学校の成績も悪かったといいます。学校では周りの子どもにいじめられ、中学の頃は、蹴られたりトイレに閉じ込められたりしたことも。家にも、学校にも、周太さんの居場所はなかったのでした。
大人4人でビデオを見る場面に直面して…
父親にも問題がありました。冒頭にも書いたように、子どもの目の前で、アダルトビデオを見たりするのです。
「僕が幼稚園の頃からです。ビデオの内容はよくわからないんだけど、いやらしいものだってことはわかるんですね。テレビでそういう場面が映ったときも、チャンネルをまわす家庭が多いと思いますけど、父は絶対にそれを見たがる。母が『そんなの見てなくていいから』と言うと、『いいじゃないか、いやだったら見なきゃいいんだ』という。そういう会話の間に立たされる子どもって、ちょっと気まずいというのを通り越しちゃうんです」
最近は、アダルトビデオを無理に見せることはDVや性虐待の一種であることが知られています。周太さんの父親は、無理に見せていたわけではありませんが、子どもの目に入るところで見てしまうわけですから、性虐待に近いでしょう。
小学生の頃、父親の友達一家が遊びに来たときの話も衝撃でした。周太さんはその家の子どもと自室で遊んでいたのですが、このとき大人たちは、みんなでアダルトビデオを見ていたというのです。
「(父の)お友達とお友達の奥さん、そしてうちのお父さんとお母さんとで、(アダルトビデオを)見ちゃうんですよ。それで僕が何か用事で居間に行くと、4人でそういういやらしいものを見ている光景があって、恥じらいもなく『なんだい? 何か用かい?』ってこっちの顔を見たりするわけです。
そういうビデオって、18歳未満は見てはいけないことになっていますよね。子どもによくないから決まりがあるわけで、そこは親として最低限守るところだと思うんです。なのに、平気で見ていられるというのは、あまりよくはない」
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